まだ見ぬ世界へ
第12章 愛を叫べ
「お疲れさまでした」
収録も終わり、楽屋へ戻る。
今日は、ひとり…か。
みんなと付き合い始めてから、ひとりで過ごす時間が減って、誰かと一緒に過ごすのが当たり前になった。
あんなに楽で好きだったひとり時間が、今は寂しいとさえ感じる。
まぁ俺には、ゲームがあるんだけどね。
山田、今日いけるかな?
そんな事を考えながら楽屋のドアを開けると、先に帰ったと思っていたメンバーがいた。
「えっ?まだいたの?」
相「もー、遅い!待ちくたびれちゃったじゃん」
「待ってたって……今日はみんな用事あるって言ってたじゃん」
わざとらしく雅紀は拗ねて見せるけど、待ってるなんて思ってないじゃん。
櫻「ごめんごめん、それは嘘なんだ」
言葉では謝ってるけど、ニヤニヤ笑う翔に反省の色は全くない。
何か、良からぬ事でも考えてる?
「で、嘘までついて待っていた理由は何ですか?」
大「ふふっ、実は和也に渡したいものがあってね」
智の言葉に3人も笑顔で頷いている。
「渡したいもの?」
松「そう。和也、手を出して」
「あ、うん」
潤に言われるがままにおずおずと手を差し出すと、そこに乗せられたのはブランド物のキーケース。
櫻「俺らさ、誕生日のお祝いはしたけどちゃんとプレゼント渡してなかっただろ?だから遅くなったけど、受け取って?」
俺にとってみんなと付き合えた事がプレゼントみたいなものだったから、こうやって改めてプレゼントを貰えるなんて思ってもみなかった。
「ありがとう、大切に使うよ」
俺は早速、ハンガーにかけてある自分のズボンのポケットからキーケースを取り出した。
あれ?
なんで、あるの?
鍵を取り外し、もらったキーケースに付け替えようと開いたら、そこには鍵が1つ。
「これって、誰か使ってたりした?鍵、外し忘れてるよ?」
鍵を見せてみたけど、みんなは『違う』と言わんばかりに首を横に振った。