まだ見ぬ世界へ
第13章 正義のミカタ
「ありがとーございました」
店から出ていくお客さんに業務的な挨拶。
「お疲れ様、少し早いけど上がっていいよ」
タッチパネルで商品を注文している櫻井店長が嬉しい言葉をかけてくれた。
「ありがとうございまーす。今日も夜勤ですか?」
『そうなんだよ……時給上げて求人出してるんだけど、来ないんだよ』
ふわぁーっと大きな欠伸。
「やっぱ、時間帯ですかね?」
『そうだろうなぁ。やっと入ったと思ったら、すぐ辞めちゃうしさ。二宮くん、誰がいい人いない?』
「いや、俺……友達少ないっすから」
『マジかぁ。このままじゃ俺、疲労と寝不足でぶっ倒れるぞ』
「ご愁傷様です」
ペコっと頭を下げ、バックヤードへと向かう。
『おい、俺を助けようという優しい気持ちはないのかよぉぉぉぉ』
誰もいない店内に、店長の嘆きだけが響いた。
『あ、お疲れ~』
「え、相葉くん?今日バイト入ってたっけ?」
相葉くんは俺より少し前からここでバイトしていて、年齢も一個上の先輩だ。
でも働く時間帯は俺と同じで深夜帯ではない。
『実はさ、どうしても買いたい物があって。深夜のバイトなら時給もいいし、人手不足って聞いてたから入れてもらった』
「そうなんだ」
『お客も少ないし、暇なら雑誌も読めるしさ。それに明日はジャンブ発売日。誰よりも早く……』
『サボってると、時給下げるぞ!』
バックヤードに店長がひょっこり顔を覗かせると、また店内へと戻って行った。
『え、ちょっと約束が違うじゃないですか~!』
相葉くんは慌てて店内へと走って行った。
『もぉ、煩いなぁ』
むくっとデスクにひれ伏していた副店長の大野さんが起きた。
あ、また寝た。
俺はいつもの事と気にせず、スマホを取り出した。
あー、このアイテム超欲しいな。
でもこれ課金でガチャしないとダメなんだよな。
お金ねーから……
あ、お金なら稼げる方法あるじゃん。
『店長!』
俺は早足で店内へ向かった。