まだ見ぬ世界へ
第13章 正義のミカタ
『って、何で店長が出勤してるんですか』
今日から深夜帯のバイト。
バイト代を稼ぐために深夜帯に入ったけど、元々は人員不足で店長がずっと休めていなかったから求人を募ってた。
なのに店長はなぜか俺と一緒にレジに入ってる。
『それはなぁ……』
店長が話し始めたけど、お客さんがレジに来たので対応を始めた。
「こちら、温められますか?」
『は…はい、お願いします』
俺は弁当をレンジに入れて温めを開始する。
「お会計、1280円になります」
『これで』
「1万円お預かりします」
『あ…80円、出していいですか?』
「はい」
サッと釣銭トレーを差し出したけど、その人は俺に差し出してくる。
……えっ?
手を差し出して受け取る一瞬、お客さんの指が掌に触れた。
『はい、では10080円お預かりします』
なんか渡し方が独特だなって思ったけど、いつも通りの接客をこなした。
ピーッピーッピーッ…
温まったお弁当を袋にサッと入れる。
「お待たせしました」
『ありがとう』
「ありがとうございました」
袋を受け取ると、ニコッと俺に微笑えんで店を出ていった。
『ほーら、だから俺は心配で帰れないんだよぉ』
「はい?」
大きなため息をつき、ガクーンと項垂れる店長。
なで肩が更に増したようにも見える。
俺、なんかしましたっけ?
「別に心配なんてすることありました?」
『無自覚にも程がある。ホント、気をつけないとダメだよ?』
今度はガシっと肩を掴まれる。
「いやいや……だから何にですか?」
『二宮くんは可愛いんだからね』
「はぁぁぁぁ?何バカな事、言ってんですか」
呆れた俺はパッと店長の手を払い退けた。
『こら、ちゃんと聞きなさい』
「聞きませーん。だって俺、男ですよ?可愛いってあり得ないですって」
後ろにあるタバコの棚の補充の有無を確認しながら、話を続けた。
『だーかーらーあっ、いらっしゃいませ』
まだ何か言おうとしたけど、どうやらお客さん来店したみたいだ。