テキストサイズ

まだ見ぬ世界へ

第13章 正義のミカタ

♪~♪~


掃除をしているとポケットに入れていたスマホが鳴った。

こそっと取り出すと、画面には相葉くんの名前が表示されていたので慌ててバックヤードに入った。

「あ、もしもし」

『もしもし、ゴメン!連絡遅くなって。なんかあった?』

「実はさ……」

今の状況を簡単に説明した。

『じゃあ、今から行くよ』

「いいって。盛り上がってるんでしょ?たぶん、店長もすぐに帰ってくるって行ってたし……お客さんも全然来ないから大丈夫」

『いや、ダメだって。もしあのお客さん来たら……』

防犯カメラを見ながら話していたら、お客さんが入ってきた。

「あ!ごめん。お客さん。電話、切るね」

『え?お客さん?ちょっと、だい……』

何か相葉くんが叫んでるのが聞こえてたけど、俺は電話を切って店内へ戻った。

「いらっしゃいませ」

男の人が店内に入ってくると、ドリンク売り場へと向かって行った。

俺はレジに入ると、お客さんがお会計に来るのを待ったけど一向に来る気配がない。


あっちをウロウロ……

こっちをウロウロ……


帽子を深く被った、このお客……怪しいな。

たまに辺りをキョロキョロして挙動も不審。


もしかして、万引きでもするつもりか?


とりあえず後ろにあるタバコの補充をしつつ、近くにあるモニターでお客さんの行動を監視。

商品に近づけば、振り返って目視で確認。


でも結局は最初に手に取ったジュースだけを持って、レジへ来た。


俺はグッと拳を握りしめ、気合を入れた。


万引き犯じゃないなら……強盗犯かもしれない。


何かあれば下にあるボタンを押して、警備員を呼べばいい。


「これ……お願いします」

下を向いたまま、俺にジュースを差し出した。

「はい……あ『二宮くん』」

「……えっ?」

俺の名前を唐突に呼んだ。

そして目の前のお客さんがゆっくりと顔を上げると、ニヤリと笑った。



うそ……でしょ。


見覚えのある顔がそこにあった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ