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まだ見ぬ世界へ

第13章 正義のミカタ

逃げなきゃ……と後退りしたけど、ガシッとジュースを取ろうとしていた手を捕まれた。

『お客いるのに……どこいくの?』

「い…っ」

俺の手首を掴む手により一層の力が込められた。


何とか助けを呼ばなきゃ……

必死に警備会社へと繋がるボタンを手探りで見つけようとするのにどこにあるかわからない。


なんで?

なんで?

どこ?

どこにあるの?


『なにしてるの?』

抑揚のない声に俺は怖くて必死に首を横に降る事しか出来ない。

『余計な事したら……白い綺麗な肌が赤に染まっちゃうよ?』

グッと引っ張られて前のめりになった瞬間、首筋に冷たいモノが触れた。


嘘……

嘘だよね?


ゆっくりその場所に視線を向けると、見えたのはナイフ。


『俺も可愛い二宮くんを傷つけたくないんだよ?だから、大人しくしてね?』

俺はゆっくりと頷いた。

『そんなに震えないで?大丈夫、怖くないよ俺は』

反対の手が俺の頬を包んだ瞬間、より一層ピクっと身体が震えた。

『ずーっと二宮くんに触れたかった。2人っきりになりたかったのに……』


ガンッ……ガンッ……


レジカウンターを蹴っている音。


ガン…ガン…ガン…ガン…


それが段々と大きく、そして早くなっていく。


ガンッ!


『いっつも、いっつもアイツらが邪魔しやがって!』


静かな店内に響く怒号。


怖い…

怖いよ……


『ふふっ、ごめんね?怒鳴っちゃって。でも今日はアイツらがいない。誰にも……僕たちの邪魔はさせないからね?』

ツーっと首筋に冷たいナイフを滑らした。


俺はバカだ。

ちゃんと忠告を聞くべきだった。


店長が相葉くんに連絡してくれたのに……


相葉くんが来てくれるって言ってくれたのに……


お願い。

店長……早く、帰ってきて?


お願い。

相葉くん……お店の様子、見に来て?


ねぇ……

誰でもいいから……



助けて……


『僕を……見て?』

滑らせたナイフの刃が俺の顎をツンツンとしたので、視線を上げる。


……えっ?

なんで?


不気味な笑みのさらに先に、救世主が『静かに』と言わんばかりに口元に人差し指を当てて立っていた。

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