まだ見ぬ世界へ
第3章 幸福論【序章】
「…ごちそうさま」
サッとナプキンで口を拭くと立ち上がった。
父が帰ってきて久しぶりの家族水入らずの食事なのに、誰もその事を喜んでいない。
特に母は食事前同様、ずっと様子がおかしい。
いつもなら『早く食べなさい』って父に怒られるくらいずっと話をしているのに今日は無口で、ただ黙々とご飯を食べ進めている。
そして母の様子がおかしい事に父もお手伝いさんも気がついているはずなのに、誰もその事に触れようとしない。
いや、俺でさえ触れてはいけない雰囲気が漂っている。
「和也、待ちなさい。話がある」
「あなた…っ」
『いただきます』と言ってから無言だった父と母がようやく言葉を発した。
いつも以上に落ち着いた物言いの父と、悲痛な声をあげた母。
「母…さん?」
顔を上げた母は……泣いていた。
「避けては通れないんだ。引き延ばしにしたって和也が辛くなるだけだ」
「でも……」
「あれを頼む」
母の言葉を遮ってお手伝いさんに目配せする。
こんな状況でも冷静に話す父は、きっと母の涙の理由がわかってる。
「……はい、かしこまりました」
そしていつも笑顔を絶やさないのに……
神妙な面持ちのお手伝いさんたちも、きっと母の涙の理由をわかってる。
わかっていないのは俺だけ。
「こちらです」
戻ってきたお手伝いさんが父に渡したのは、どこにでもあるA4サイズくらいの薄茶色い封筒。
「これが何を意味するか……わかるな」
宛名には家の住所と俺の名前。
通常の手紙ならわざわ父から受け取る必要もないし、いつもはお手伝いさんから受け取る。
「……はい」
でも下に大きく封筒に印字されれいる送り主を見て、すべてを察した。
幸せすぎて忘れてた。
この手紙が届くことを……
日本プラチナデータ機構
これは『Ω性』にだけ届く手紙。
いや……切符かな?
限られた未来に向かう……片道切符。
サッとナプキンで口を拭くと立ち上がった。
父が帰ってきて久しぶりの家族水入らずの食事なのに、誰もその事を喜んでいない。
特に母は食事前同様、ずっと様子がおかしい。
いつもなら『早く食べなさい』って父に怒られるくらいずっと話をしているのに今日は無口で、ただ黙々とご飯を食べ進めている。
そして母の様子がおかしい事に父もお手伝いさんも気がついているはずなのに、誰もその事に触れようとしない。
いや、俺でさえ触れてはいけない雰囲気が漂っている。
「和也、待ちなさい。話がある」
「あなた…っ」
『いただきます』と言ってから無言だった父と母がようやく言葉を発した。
いつも以上に落ち着いた物言いの父と、悲痛な声をあげた母。
「母…さん?」
顔を上げた母は……泣いていた。
「避けては通れないんだ。引き延ばしにしたって和也が辛くなるだけだ」
「でも……」
「あれを頼む」
母の言葉を遮ってお手伝いさんに目配せする。
こんな状況でも冷静に話す父は、きっと母の涙の理由がわかってる。
「……はい、かしこまりました」
そしていつも笑顔を絶やさないのに……
神妙な面持ちのお手伝いさんたちも、きっと母の涙の理由をわかってる。
わかっていないのは俺だけ。
「こちらです」
戻ってきたお手伝いさんが父に渡したのは、どこにでもあるA4サイズくらいの薄茶色い封筒。
「これが何を意味するか……わかるな」
宛名には家の住所と俺の名前。
通常の手紙ならわざわ父から受け取る必要もないし、いつもはお手伝いさんから受け取る。
「……はい」
でも下に大きく封筒に印字されれいる送り主を見て、すべてを察した。
幸せすぎて忘れてた。
この手紙が届くことを……
日本プラチナデータ機構
これは『Ω性』にだけ届く手紙。
いや……切符かな?
限られた未来に向かう……片道切符。