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まだ見ぬ世界へ

第3章 幸福論【序章】

人口のほとんどは『β性』が占めていて、次に『α性』、そして一番少ないのが『Ω性』


俺は動物かよって話だけど……

Ω性は、絶滅危惧種なんて言われる。

さらに『男』のってなると女性のΩ性の半分もいない。


けど社会では冷遇される存在。

おかしくない?

絶滅危惧種なんて言うなら、優遇しろって話。



でも今の日本を支えているのは『α性』



その考えは納得いかないけど、それが国を支えている人たち、つまりは色々な社会でトップに立つ『α性』を持つ者達の考え。

まぁ、他の国でもトップに立つ人は『α性』を持つ者がほとんどだから、対等に向き合うには『α性』である事は必須なのかもしれない。

それに悔しいけど、α性が生まれ持った身体能力や知能が高いのは事実。

努力だけではどうしようもない。


だから国は一人でも多くの『α性を持つ子ども』が生まれる事を望んでいる。



そのα性を持つ子どもを生むことが出来るのは『Ω性』のみ。

そしてその相手は『α性』のみ。



条件に当てはまらない場合もあるらしいけど、ごく稀でしかない。

だからα性を生む可能性が高いΩ性には、一人でも多くの子どもを産んで欲しい。


そしてΩ性を持つ者であれば男でも妊娠、出産する事ができる。

その事実も俺にとっては都市伝説レベルだけど……

『Ω性の男』はより有能なα性の子どもを生むことが出来るらしい。


だから『Ω性を持つ男』の俺は国にとっては貴重な人種。


いや、人じゃない。

きっとただの『α性』を生み出す道具。



その準備段階となるのがこの『日本プラチナデータ機構』からの書類。



「和也」

「う…ん」

俺は、震える手で父から差し出された封筒を受け取った。


すでに封が開いていた。

色々と書類が入っているけど、俺にとって必要な分は限られている。

中身を確認して、それだけを引き抜いた。

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