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まだ見ぬ世界へ

第13章 正義のミカタ

『お前、ずっとそれ言ってんな』

『えー、ナニナニ?気になる、気になる!』

なぜか呆れモードの店長と興味津々の相葉くん。

『小さい頃、ひったくりを捕まえた事があるんです。まぁ……正確に言えば警官だった父がなんですけどね』


ひったくり。

そして父親が犯人を捕まえた。


潤さんの話す内容と同じ出来事が小さい頃の俺にもあった。


もしかして俺、潤さんと会った事があるの?

今の話から推測すると、あの時の男の子って潤さんだったって事?


『その時に助けた子に二宮くんが似てるんですよ。面影っていうか、なんていうか……』

ポリポリと頭を掻きながらなぜか照れ始める潤さん。

『いやいや、二宮くんのわけないじゃん。そもそもその子、女の子だろ?』

バカにしたように笑う店長。


女の子?


『そうなんですけど……なんか、ほっとけなくって』


話す内容が同じであっても明らかに俺は『男』だ。

やっぱり、俺じゃないんだ。


……って、なんで俺落ち込んでるんだろう。


『随分、助けた女の子に思い入れがあるんだね』

『あー、いや……それは……』

副店長の問いに、急に歯切れが悪くなる潤さん。

『その子、潤の初恋の子なんだって』

ニヤニヤしながら潤さんを見やる店長。

『初恋っつーか、俺が警察官になりたいと思ったキッカケなんですよね』

下を向き、ポツリポツリと恥ずかしそうに話し始める潤さんの姿に、なぜか胸が苦しくなる。

『泣きそうになっていた子にひったくられた袋を渡したら、泣いて顔がめっちゃ笑顔になって……それがチョー可愛くって』

話していくうちにテンションが上がったのか、下を向いていた顔も上がった。

『で、その時に言われたんです。『ヒーローみたいだね』って』


……えっ?


『ヒーローみたいだね』


その言葉に俺は聞き覚えがあった。

正確には……言った覚えがあった。


ちょっとだけ……

いや、ひとつ大きく『男』と『女』というエピソードの違いはあれど、目の前にいる潤さんはあの時の男の子だ。

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