まだ見ぬ世界へ
第13章 正義のミカタ
『いらしゃ……って、お前かよ』
来店した客が俺だと知った瞬間に、営業スマイルを止めた櫻井先輩。
「失礼じゃないですか?一応、俺も客ですけど?」
『何が客だよ。そんな偉そうに言うなら、1万円分くらい買い物しろ』
「はぁぁぁ?」
『まぁまぁ、落ち着いて』
レジにいる櫻井先輩に詰め寄ろうとしたら品出しをしていた相葉さんがポンポンと俺の肩を叩いてきた。
「あのー、ここの店員さん生意気なんですけどー」
『潤、お前も言うようになったな』
「誰かさんのお陰で、鍛えられました」
ニヤリと笑う櫻井先輩に、ニヤリと笑い返して見せた。
『ったく、ここはお前らのデートの待ち合わせ場所じゃねーぞ』
「でっ、デートじゃないです!迎えに来たんです!」
『ぷっ、動揺し過ぎだから』
慌てて否定する俺を見て相葉くんが吹き出して笑う。
『ふんっ、お前もまだまだ俺には勝てねぇな』
『ふわぁぁぁ、もう……煩いなぁ』
大きな欠伸と伸びをしながら大野さんがバックヤードから店内に入ってきた。
カズと一緒に。
『すみません、遅くなって』
「大丈夫、今来たところだから。変な客とか、来なかった?」
『潤くんはホント心配性だね。もう大丈夫だってば』
可愛く笑うカズを見て、俺の心配は尽きる事は無い。
寧ろ、増す一方。
ホント今、周りに客がいなくて良かった。
「油断大敵だって言ってるだろ?」
『もー、わかったよ』
軽く頬を膨らまし、拗ねてる姿もまた可愛い。
『おーい、俺らがいるの忘れてない?』
『ふふっ、相変わらず仲が良いね』
『おい、営業妨害だ。ほらほら、さっさと帰れ』
外野の言葉は聞き流すに限る。
「そろそろ、帰ろっか」
『はい。では、お先に失礼します。お疲れ様でした』
『『お疲れー』』
『おい、なんか買ってけぇ!』
ペコっと3人にカズが頭を下げると、俺たちは店を出た。