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まだ見ぬ世界へ

第13章 正義のミカタ

当たり前だけど、あの日の恐怖は簡単には拭えない。

でもバイトをしない訳にもいかず、こうやって今はまた先輩のコンビニでカズは働いている。

他の店や業種で働くことも考えてたみたいだけど、カズは『ここがいい』とバイト先を変えなかった。


もちろん、あのストーカー野郎には接近禁止命令が下された。

アイツが店に来ることも、会う事ももうない。


でもアイツの存在がカズの中で消えることは無い。

だからこそ同じ場所にいると、あの恐怖がフラッシュバックするんじゃないかって心配だった。


だだその一方で、カズにとっても俺にとっても気心知れた人がそばにいるのはやっぱり心強かった。


けどいつまた、アイツのようなストーカー野郎が現れるかわからない。

いや、現れるに違いない。


だってカズはやっぱり……可愛い。

またそれが無自覚だから厄介だ。


だからこうやって俺が非番の時はカズを家まで送っている。

そしてそれが出来ない時はなるべく深夜バイトには入らないようにしてもらっているし、俺が仕事の時は櫻井先輩や大野さん、相葉くんが送ってくれたりしている。

ホント、カズはいい人に恵まれてる。


まぁ、あとは早く深夜バイトを櫻井先輩が採用しろって話。


『潤くん?』

「ん?どうした?」

『なんか難しい顔してるから……疲れてるよね?ごめんね』

どうやら俺が疲れてボーッとしていたと勘違いしているみたい。

「それは気にするなって言ったじゃん。俺が心配だし、俺が送りたいからカズを迎えに行ってるの」

『うん……いつもありがとう』

「どーいたしまして」

潤んだ瞳で俺を見つめて、微笑む。


あー、マジで可愛い!って叫びたい。

そしてギューって抱き締めたい。


でも、やっぱりそれは出来なくて……


まだ、カズが怖いかもって。

いくら俺の事を信頼してくれていたって、それとこれとは別。

それが本人の意思とは関係なくってもね。

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