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まだ見ぬ世界へ

第13章 正義のミカタ

「ちゃんと鍵かけてね。じゃあね。何かあったら絶対に連絡してよ」

『あ…っ』

カズを無事に家まで送り届け、帰ろうとすると俺の服の裾を掴んで引き留めた。

「どうした?部屋、なんかおかしいのか?」

『ううん、そうじゃなくって……』

下を向き、俺の裾を持ったままジモジしている。


その仕草、ちょっと可愛いんですけど。


『良かったら、寄って行かない?』

ゆっくり顔を上げると、上目遣いで俺を見つめる。


この状況に俺の心配という名で覆っていた理性が崩れそうだ。


「え、あ……いいの?」

『うん』

ゆっくりと頷くカズにゴクッと唾を思わず飲み込んだ。


これってさ……


あ、いや……違う違う。

きっといつも送っている俺にお礼がしたいから、お茶でもって事だよね。

そうだ、そうだ。


必死に理性をかき集めてガチガチにまた固める。


「どうぞ」

『あ、うん……お邪魔しまーす』

なるべく軽い感じというか……明るく振る舞って見せた。

「うわ…っ」

玄関に足を踏み入れた瞬間、勢いよくカズが俺に飛び込んできた。

『か…カズ?』

突然の行動に戸惑ってしまったけど、俺はカズの身体をゆっくりと抱きしめた。


ようやくカズに触れられた。

ずっとこうしたいと思ってた。


でも……できなかった。


怖かった。

拒否されることが……


でも俺の行動にカズの身体が震えたり、拒否する反応はなかった。


よかった。

俺に対して、恐怖心はでないみたい。


「急にどうした?」

『潤くんだったら大丈夫だって……』

「えっ?」

『怖くないって、そう……思えたから』

胸に埋めていた顔を上げて、また潤んだ瞳で俺を見つめる。

「ホントに……大丈夫?」

優しく俺はカズの頬を掌で包み込んだ。

『大丈夫……大丈夫だよ』

その俺の掌に頬を寄せるカズに秘めていた愛しさが溢れた。

「……いい?」

『……うん』

俺の問いを理解したカズが、ゆっくりと瞼を閉じた。

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