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まだ見ぬ世界へ

第3章 幸福論【序章】

手元に残ったのは2枚。

この書類にはマッチングシステムでピックアップされた人、つまりは俺と『番』という関係になる可能性がある人の情報が記載されている。

もちろん相手が拒む可能性もあるし、一応俺にも拒否権はある。

だだ遺伝子レベルでの相性を拒否する事は国の意向に背くことに値し、拒否した者に罰金が科せられる。

でもα性は地位と名声を持つ者が多いから、当然お金持ち。

罰金を支払うくらいどうって事ない。

気に入らなければ即、拒否する。


言わば、選び放題。


だけど『Ω性』を持つ者はそうもいかない。


Ω性とα性では罰金額の桁が違う。

結局、国にとって貴重な存在であっても『Ω性』は冷遇され、拒否権なんてあってないようなもの。



でも俺は……それでも幸せだ。



国は元々、優秀なα性を生まれる事を望み、α性とΩ性を結婚……つまりは番の関係にさせる。


つまり『Ω性』は望まれて産まれた存在ではない。



それは国にっとっても……

Ω性と番の関係になった『α性』にとっても……



α性はα性以外の存在は認めない。

だから『番』となった相手すらも認めようとはしない。

まさに子どもを産む道具としか思っていない。


それが自分の子どもであっても同じ。


『Ω性』の子どもが生まれた瞬間、育児を放棄し、何があっても自分の子どもとは認めない。

その事にお腹を痛めて生んだ者でさえも反論できず、子どもは強制的にある施設へと預けられる。

その施設は国が運営していて何の問題もない様に思えるけど……


それは真っ赤な嘘。


結局、母親と同じ子どもを産む道具となる。

だけどより、残酷。



一生、外す事のできない首輪。

それは番になるのを防ぐ為だけど、決して自分を守るものではない。

番になればその相手以外は身体が受け付けない。


ただそれを防ぐため。

どのα性とでも交わり、身籠れるためでしかないんだ……

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