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まだ見ぬ世界へ

第15章 エンドウの花

『キミ……可愛いね。何歳?』

薄気味悪い笑みに思わず鳥肌が立ち、胃には何もないのに吐き気がした。


アイツも言ってた。

俺を抱きながら可愛いって……


『まぁいいか。君なら3万は出せるよ?』


勝手に俺の身体の値段付けてんじゃねーよ。


キッと睨みつけると、男は怒るどころか嬉しそうに目を細めた。

『君みたいな威勢のいい子は抱き甲斐がある』

そう言うと俺の手首を掴んで無理やり立たせた。


逃げたいけど……

そんな力はどこにも残っていない。


『俺の目に狂いはなかった。いい身体……してるね』

舐め回し、そして品定めするように俺の身体を見てくる。

『抱かれたことあるでしょ?男に』

耳元で囁かれ、そのあたる生ぬるい吐息までアイツと一緒。

そして意図も簡単に言い当てられる事実に俺は何も答えることが出来ない。

『当たりだよね?』

ニヤリと俺に笑って見せる。

『大丈夫、どの男よりも俺が満足させてあげるから』

スッと伸びてきた手は俺のお尻の割れ目をなぞった。

「止め…っ」

後ずさって逃げようとしたが、コンビニの壁が俺の行き場を奪う。

『その目……そそられる』

今度は俺の輪郭を男の指がなぞる。

「さわんじゃねーよ」

俺はその汚らしい手を払い退けた。


『あんまり調子に乗るなよ』


抑揚のない低い声。

俺を見下すような冷たい目。


何もかもアイツと……アイツと同じだ。


「痛っ…」

『どうせ金が欲しくて抱かれてたんだろ?それなら黙って抱かれればいいんだよ!何なら、ここでもいいんだぞ』

「止めろっ!離せ…っ!」

痛いくらいに手首を掴まれ、暗闇へと引っ張られる。

「止め…っ、離せっ!」

無駄に静かな分、俺の叫びは響く。

でもそれは誰にも伝わらない。


誰も俺の事なんて……


ドンッ…


『いてーな。おっさん、どこ見て歩いてんだよ』

何かにぶつかる音と、動く数人の気配を感じた。

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