テキストサイズ

まだ見ぬ世界へ

第15章 エンドウの花

『お前……犬みたいだな』


はぁ?

何言ってんだコイツ。


イラっときて心地よかった翔ってヤツの手を荒々しく払い退ける。

『そう、それだ!やっとスッキリしたよ』

相葉ってヤツが俺の前に再びしゃがみ込むとくしゃくしゃと少し乱暴に撫でる。


俺はスッキリしない。

寧ろ、イライラが増してるですけど。


「止めろって!」

ペシっと手を払い退ける。

『調子に乗るから牙をむかれたって感じだな』


店舗の壁にもたれた……誰だ?


唯一名前がわからないヤツがクスクス笑っている。

『俺、動物には好かれるタイプだけどな』

不満そうな顔をするけど、そもそも俺は動物ではない。

『なら潤が噛まれる理由も納得じゃね?』

ニヤニヤ笑いながら翔ってヤツが該当者を見つめる。

「うっせーな、俺は好きなのにあっちが吠えたり逃げたりするんだよ」


少しだけ動物の気持ちを理解できた気がする。


こんな濃い顔が近づいたらビビるよな。


『なんだよ』

ジッと見ていたら俺を睨んできたから、反射的に睨み返してしまった。

『やっぱり、嫌われてやんの』

『うっさい、黙れ』

今度は雅紀ってヤツがクスクス笑った。

『おい、ワンコロ!』


だから俺は犬じゃない。

ってか、八つ当たり感がハンパないんですけど。


『これからどうするんだよ』


何だよ……

俺を『犬みたい』とからかっていじってたのはお前らだろ?

勝手に現実に戻すんじゃねーよ。


てか、俺にこれからなんてない。


だからその質問には答えない。


『もしお金無いなら貸すよ?1万円もありゃタクシーで下りれるし』

翔って人の提案は有難い事だけど、俺にとっては無意味な事。

『まさか、帰る家……なかったりして』

冗談混じりに言ってるけど、その通り。


もし、俺が犬なら……

捨て犬なら、お前らは俺を拾ってくれる?


って、俺も何でコイツらに影響されてんだろ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ