まだ見ぬ世界へ
第3章 幸福論【序章】
「……あと1人、マッチングシステムで選ばれた人がいるんだ」
背広の胸ポケットから折ってある紙を俺に差し出す。
封が開いていた時点で、父と母が先に書類に目を通しているのはわかっていた。
でも何でこの人だけ、別で渡したんだ?
「な…なんで……」
その理由はすぐに分かった。
記載された名前、そして写真には見覚のある人という言葉では表す事なんて出来ない人。
それは紛れもない……兄。
「こんな形で伝える事になって申し訳ない」
父が初めて俺に頭を下げた。
「隠すつもりはなかったが、伝える必要もないと思っていた。私たちにとって息子である事には違いなかった」
兄は『Ω性』
けど兄弟はマッチングシステムの対象外のはず。
でも兄がマッチングシステムに入っているという事は……
俺と兄は……血が繋がっていない。
なら……
「……ねぇ、本当の息子……血の繋がってるのは……どっちなの?」
「そっ、それはどっちでもいいじゃない。私たちにとっては……」
「ねぇ、父さん!教えて、教えてよっ!どっちなんだよ!」
母の言葉を遮って父の胸倉を掴んで揺らした。
ここまで来たら……ちゃんと全部知りたい。
「母さん、あの写真を取ってくれ」
「あなた…っ」
「母さん!」
静かな部屋に響いた父の声。
それでも暫く動く気配を見せない母。
「母さん」
父は立ち尽くしたままの母の元へと向かい、腰に手を回すとゆっくりと2人で歩き出す。
向かったのは沢山の家族写真が飾られている場所。
そしてその中からあるフォトフレームを母が手に取り、ジッと飾られている写真を見つめる。
俺は2人の元へ向かい、母が持っているフォトフレームに飾られている写真を見た。
そこには今より若い父と母、そして幼い頃の兄さんと俺。
そしてたくさんある飾られていたフォトフレームの中で俺が一番小さかった頃の写真。
すると母は震える手でフォトフレームの裏側を開けた。
背広の胸ポケットから折ってある紙を俺に差し出す。
封が開いていた時点で、父と母が先に書類に目を通しているのはわかっていた。
でも何でこの人だけ、別で渡したんだ?
「な…なんで……」
その理由はすぐに分かった。
記載された名前、そして写真には見覚のある人という言葉では表す事なんて出来ない人。
それは紛れもない……兄。
「こんな形で伝える事になって申し訳ない」
父が初めて俺に頭を下げた。
「隠すつもりはなかったが、伝える必要もないと思っていた。私たちにとって息子である事には違いなかった」
兄は『Ω性』
けど兄弟はマッチングシステムの対象外のはず。
でも兄がマッチングシステムに入っているという事は……
俺と兄は……血が繋がっていない。
なら……
「……ねぇ、本当の息子……血の繋がってるのは……どっちなの?」
「そっ、それはどっちでもいいじゃない。私たちにとっては……」
「ねぇ、父さん!教えて、教えてよっ!どっちなんだよ!」
母の言葉を遮って父の胸倉を掴んで揺らした。
ここまで来たら……ちゃんと全部知りたい。
「母さん、あの写真を取ってくれ」
「あなた…っ」
「母さん!」
静かな部屋に響いた父の声。
それでも暫く動く気配を見せない母。
「母さん」
父は立ち尽くしたままの母の元へと向かい、腰に手を回すとゆっくりと2人で歩き出す。
向かったのは沢山の家族写真が飾られている場所。
そしてその中からあるフォトフレームを母が手に取り、ジッと飾られている写真を見つめる。
俺は2人の元へ向かい、母が持っているフォトフレームに飾られている写真を見た。
そこには今より若い父と母、そして幼い頃の兄さんと俺。
そしてたくさんある飾られていたフォトフレームの中で俺が一番小さかった頃の写真。
すると母は震える手でフォトフレームの裏側を開けた。