テキストサイズ

まだ見ぬ世界へ

第15章 エンドウの花

車はガタガタと揺れ、険しい道のりを進んでいく。

揺れの激しさが増すごとに、俺の額の脂汗もじわじわ噴き出してくる。

『もしかして……酔った?』

雅紀が振り返って俺を心配してくれた。

「ちょっと……気持ち悪いです」

『乗り物、弱いの?』

翔が俺の顔を覗き込んできた。

「はい、苦手です」

船とか揺れの激しい乗り物はどうしても苦手で酔ってしまう。

『そこに薬入ってるから取って』

『ん、わかった』

潤の指示で雅紀がダッシュボードを開け、小箱を見つけると中から薬を取り出した。

『はい、どーぞ』

『それ、水なしでも飲めるから』

『ありがとう、じゅ…ん」

ぎこちなくそう呼ぶと、潤がニカッと笑った。

俺は雅紀から受け取った薬を噛み砕いて飲み込む。

『もうすぐしたら揺れがマシになるから、
それまでは休んでろ』

グイッと俺の頭を引き寄せられ、智の肩に預ける形になった。

「だっ、大丈夫です!」

『いいから、遠慮すんなって』

首を起こそうとしても智の手でロックされる。

『遠慮するほど価値のあるもんじゃないよ?』

『翔よりは価値があると思うよ?だってその肩だと……滑り落ちちゃうじゃん』

『そんな撫で肩じゃねーわ!』

2人のやり取りに声を上げて笑う雅紀と潤。


そのやり取りに参加していないけど、それが寂しいとは思わない。

寧ろ、この空間が心地いい。


なんか……温かいな。


『ちょっと、寝てな?』

ポンポンと優しく頭を叩くリズムで、ゆっくりと瞼は落ちていった。







『…ズ……カズ、起きて?』

「ぅ……ん」

『そろそろ、着くよ?』

意識がゆっくり浮上する中で、あんなに辛かった車の揺れは無くなっていた。

ゆっくりと目を開けると、薄い霧に包まれている中で不思議な光景が広がる。

木々が生い茂る中に、不釣り合いな整備された道路が伸びる。

『あっ、見えた!』


なっ、なに……?

これ……


潤の言葉と共に霧が晴れ、浮かび上がった光景に驚きすぎて声が出なかった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ