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まだ見ぬ世界へ

第15章 エンドウの花

『教会に見えないだろ?』

唖然とする俺に智が声をかけてくれる。


集まった人が祈りを捧げるであろう、長いベンチはどこにも無い。

あるのは協会の中にあるはずがない、プレハブ小屋が4つ。

俺の足元にはレッドカーペットの様なものが敷かれ、それぞれのプレハブ小屋へと導き、そして部屋を区切っていた。


その区切った形は十字架そのもの。


そして十字が交わる場所には、ポツンとソファとテーブル。

「ここは……なに?」

素直に疑問をぶつけてみた。


だってそれ以外の言葉が見つからない。


『説明すると長くなるから、あとでもいい?』

「わかった」


きっとそれは俺が疑問に思っていた『掟』の話なのかもしれない。


『カズはソファーで待っててくれる?』

「うん」


翔に言われてソファに向かって歩いているだけ。


それだけなのに……

なぜかそこに導かれれいるような感覚になった。


『俺たちも……着替えますか!』

雅紀の言葉で、十字が交わる場所から別れてそれぞれプレハブへと向かう。

そして慣れた感じで鍵を開け、中に入っていった。


ここは……4人の部屋?


そんな事を考えながら、みんなが部屋を出てくるのを待つ。

キョロキョロと辺りを見回しても、変わらない景色と物音ひとつしない空間。


不意に襲い来る孤独感に耐えるように、温もりを逃がさぬよう膝を抱えて座った。


ガチャ…
ガチャ…
ガチャ…
ガチャ…


ドアの開く音が立て続けに聞こえた。

顔を上げて四方を見ると、みんな同じ黒のスーツに身を包んでいた。


近づいてくる4人に笑顔はなくて、今から葬儀にでも参列するみたいな雰囲気。


『さてと……行きますか』

智は気合いを入れるように、ネクタイの結び目を襟元まで上げた。

『じゃあ、行ってくるね』

雅紀がポンポンを俺の頭を撫でると、潤や翔や智も同じようにして扉へと向かう。

「ねぇ…っ、帰って……来るよね?」

振り返って確認すると、4人はようやく笑ってくれた。

『帰ってくるよ』


智の言葉……信じていいよね?


開く扉から差し込む光に4人の姿は消えた。

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