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まだ見ぬ世界へ

第15章 エンドウの花

【潤side】


『潤さまっ!勝利の話……本当ですか?』
『ごっ、ご冗談ですよね?』

屋敷に戻って早々、俺の駆け寄って真意を確認してくる。

混乱するのはわかりきっていた事。


言うなって言っただろ?


そう目で訴えながら勝利を見ると、ペコリと頭を俺に下げた。

きっと村に連れてきたのが『男』と知り、勝利を罵倒したヤツもいるだろう。


あとは俺が……引き受ける。


「本当だ、嘘じゃない」

堂々と宣言して見せる。

『何を血迷っておるんじゃ!『男』だなんて……認めんぞ!」

「あんたがどう思おうが関係ない。俺が……俺たちが『運命の人』だと思った人を掟に従って村に連れてきた。何か問題でもあるか?」

『掟をわかっておるのなら、女じゃいけないことは……』


掟、掟って……

いい加減、うざったいんだよ。


そのせいで俺と智と翔と雅紀の母親は死んだ。


また人の命を奪う俺たちを産んで……


「お前……娘、いるのか?」

『なっ、何を急に……』

「いるかって聞いてんだよ!」

『いらっしゃいます』

俺の意図する事に気がついたのか、勝利が代わりに教えてくれた。

「じゃあさ……娘、抱かせてよ?なら、掟は守れるし世継ぎも産まれるぜ」

『そっ、それは……』

俺はゆっくりと距離を詰め、たじろぐヤツの胸倉を掴んだ。

「掟、掟って……なにも犠牲にしないヤツが好き勝手言ってんじゃねーよ!」


黙って見てるヤツらもコイツと同じだろ?


「文句があるなら……掟を守りたいなら、自分の娘や大切な女……差し出せよ!」

周りを囲むヤツらに向かって言い放ち、胸倉を掴んでるヤツを軽く突き飛ばした。

「行くぞ、勝利」

『はい』

俺は周りのヤツらに背を向け、ゆっくりと歩き出す。

『潤さま…っ!』

俺を名を呼ぶ声は悲痛な叫び。


わかってる。

本当はみんな俺を思っての事だって。


「……さようなら」


ガチャン…

屋敷のドアが閉まると、俺を呼ぶ声は聞こえなくなった。

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