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まだ見ぬ世界へ

第15章 エンドウの花

【カズside】


4人が出ていってどれくらい経っただろう。

時計が無いから時間がわからないけど、きっとそんなに経ってないと思う。


だけど一人の時間はやけに長いように感じて……そして寂しい。


膝を抱える腕にどんどん力が籠って、身体を小さく縮こませていく。


このままどんどん小さくなって、跡形もなく消えたらどんなに楽だろう。


でも消えちゃったら会えない……か。


何でそもそも俺は、そんなに4人に会いたいんだろう。


いくら考えてもわかんない。


そして考えれば考えるほど、4人の事を俺は何も知らない。



でも……会いたいだ。



重い頭を上げて後ろを振り返ると、開く気配がない固く閉ざされた扉が目に入る。


何やってんだろ。


寂しさをより実感しただけ。


俺はすぐに元の体勢に戻ると、目を閉じて時間の流れに身を任せる。


カチャ…


聞き逃すほどの小さな音だけど、俺にとっては待ち望んでいた音だからしっかりと耳に届く。

パッと頭をあげて振り返ると、潤の姿が目に入った。


帰ってきた!

ちゃんと帰ってきてくれた!


「うわっ!」

立ち上がって潤の所に向かおうとしたら、長時間同じ体勢だったから脚が縺れて、その場に豪快にこけた。

『カズ!』

驚いた声とこちらに近づいてくる足音。

『大丈夫か?』

「うん」

優しい声に顔を上げると、帰りを待っていた人の1人がすぐそばにいた。

『嘘つくなっつーの』

「えっ?」

潤の手が頬を包み、親指が何かを拭う様に動いた。

『泣いてんじゃねーか』

その言葉で自分の頬が濡れていることを知った。

『おい、どこか痛いんだ?』

ケガしている箇所を必死に探そうとする潤。


その姿を見て、また自然と涙が溢れてしまう。


「だっ、大丈…夫だから」

ギュッとスーツの裾を掴んで訴えた。


だって……

きっと俺は嬉しくて泣いてるんだから。

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