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まだ見ぬ世界へ

第15章 エンドウの花

『俺たちは、みんな同じ誕生日なの。それぞれ父親が掟を守り、そして俺たちは生まれた。だから親父たちは今も……生きてる』


雅紀のお父さんや、みんなのお父さんは生きている。

ということは、掟を守ったら絶対に死なない。


なら、みんなも掟を守れば……



『母親の命を……犠牲にしてね』



雅紀の震える声に、俺は何も言えなくなった。

『…っ、ごめん』

ゴシゴシと強く雅紀が目を擦るから、咄嗟に俺は立ち上がってその手を止めた。

『さっき言った事、覚えてる?重要なのは『運命の人』ってところ』

「う…ん」

隣に座っていた潤が雅紀の肩を抱きながら
代わりに話を始めた。

「この掟は全て守られなければ、誰かの命が犠牲になる。つまり母親が死んだのは『運命の人』じゃなかったから」


そんな……嘘でしょ?


『でも子孫繁栄って言う部分では俺たちを宿したから……父親の命は助かった』

翔の言葉に怒りの感情を感じ取った。

『俺たちは母親の命を犠牲にして産まれた。忌まわしい掟の運命を背負って……』

自分を責めるような言葉を放つ智。

『運命の人がどうかは……子どもが生まれた時にしかわからない』

掴んでいた雅紀の手が震える。


俺が考えていた掟は甘すぎた。

こんな残酷な運命を背負う掟だなんて……


交わって子ども宿す。


そして産んだ後に生きていれば『運命の人』

死んでしまったら『運命の人ではない』


逆に言えば、産むまで『生きる』か『死ぬ』かわからない。


『こんな掟、俺たちで終わらせるんだ』

決意表明にも似た智の言葉。

『俺たちが掟を守らなければ、誰かの命が犠牲になる事もないし、掟を引き継ぐ子どもも産まれない』


翔の言う通り。

考えれば誰でもわかる事。


でもそれは簡単な事じゃない。


きっと大きな代償を背負うことになるだよね?

だからみんな、母親となる人を犠牲にするかもしれないと思いながらも『掟』を守ったんだよね?


だって、『掟』を守らなければ……


『そして掟を破った俺たちは……死ぬ』

当たって欲しくない予想は、智の言葉と一致した。

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