まだ見ぬ世界へ
第15章 エンドウの花
「いった…」
ガラスの破片で切った傷に消毒液が沁みる。
『無茶したバツだ。我慢しろ』
「いったぁぁぁい」
ペチンと叩くように掌にガーゼを乗せる潤。
『まぁ、それくらいにしてやれよ』
優しく俺の手を取り包帯を巻いてくれる翔。
「あの……しょ……翔?」
少し巻いてはやり直し、また少し巻いてはやり直す翔。
『不器用過ぎるでしょ』
『ちょっと失敗しただけだよ!』
顔を真っ赤にさせて潤に反論するけど、また包帯を巻き直してる。
『こっちはもう終わったよ』
智の手当てを終えた雅紀がこっちにきた。
『俺のはほら……完璧』
包帯を巻いてくれた手を見せつける智。
『煩いっ!』
その手をペチンと叩いて八つ当たりをする翔。
『痛てーな!ケガしてんだぞ』
『知るか!』
『もう、喧嘩するなら包帯貸して!』
パッと翔から包帯を奪うと、スルスルと綺麗に巻いてくれた雅紀。
案外……器用なんだ。
『おしまい』
「……っ」
俺の手を唇に引き寄せると、雅紀はチュッとそこにキスを落とした。
『ふふっ、顔真っ赤』
『さっきは『抱いて』なんて大胆な事言ってたのにね?』
「そっ、それは……」
潤も一緒になって俺をからかう。
あの時は必死だったんだもん!
『それとももう……その気は』
さっきまで言い争いをしていた智が、手を伸ばしてきて俺の頬を包んだ。
「あの言葉に嘘はない」
今もその気持ちは変わらない。
『俺も……俺たちもカズを抱きたい』
真っ直ぐな瞳で俺を見つめる翔。
「うん……抱いて?」
俺はみんなを助けたいんだ。
『でも……誰から?』
「えっ?」
ふと浮かんだであろう智の疑問。
『みんなでってのはさすがにな……』
顎を指で擦りながら真面目に悩む翔。
『じゃあ、アミダは?』
えっ?
雅紀……嘘でしょ?
『よっしゃ、負けねーぞ!』
あの……潤にとって何が負けなの?
急に盛り上がる4人についていけない俺。
でもそれが不思議と寂しくはない。
逆に心がとてもぽかぽか、温かいんだ。