まだ見ぬ世界へ
第15章 エンドウの花
俺は花壇に水をやる。
「みんな、今日も元気だね」
ポンポンと小さく咲いた白い花に触れた。
『これ、花付きが悪いな』
隣で潤が枝をプチっと取り除いた。
『あぁ、ここ枝が絡まってる』
雅紀が等間隔に枝を配置していく。
「ねぇ、これって何ができるの?」
『えっ?知らなかったの?』
周りの雑草を抜く翔は驚きの声をあげる。
「教えてくれてないもん」
『智、言ってなかったの?ってか、手伝え!』
『あー、忘れてた』
ベンチに寝そべりのんびりしてる智。
『それに前に支柱立てしたから、俺の仕事は終わってる』
『はいはい、そーですか』
「あっ、翔。ちゃんと根っこまで抜いてよね」
「はい……ごめんなさい」
俺の指摘にシュンとする翔を見て思わず吹き出す。
『おい、お前らは笑うな!』
『だって翔を怒れるのってカズだけだもん』
ケラケラ笑う雅紀。
調子に乗ると知らないよ?
『もう、怒ったぞ!智、そこの蛇口捻って』
『りょーかい』
近くにあったホースを手に持つと、その先を潰して雅紀に向けた。
『ちょっと待って!止めろよ!』
『おい!こっちに逃げてくんな!』
雅紀が潤の方に逃げるから、完全に巻き添えを食らってる。
あれは絶対に……わざとだ。
『智も油断するなよ!』
翔はまたベンチに寝そべっていた智にホースを向けた。
『おい!俺は関係ないだろ!』
慌てて起き上がると、俺のいる方に逃げてくる智。
これも絶対にわざとじゃん!
「ちょっと、こっち来ないで!」
『カズ、待てー』
あっという間に捕まり、そのまま後ろから抱き締められ、そしてホースから出た水を思いっきり浴びる。
「もう、びしょ濡れになったじゃん。雅紀、潤!」
『『ラジャー』』
俺の意図に3人は気がついてくれた。
『おいっ、ごめんって!悪か…ぶはっ』
ホースを置いて逃げる翔を雅紀が捕まえると、潤が思いっきり水を浴びせかける。
こうして今日も俺たちの笑い声が空に響いた。