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まだ見ぬ世界へ

第16章 決戦は山の日

『お先、お疲れ~』

収録が終わり、相葉ちゃんはすぐに次の現場に向かった。


楽屋には俺と翔ちゃんとニノと松潤。


珍しく誰も話すことなく、黙々と帰る準備をしている。


今日の翔ちゃんは、いつにも増して完璧だった。

まぁ、俺もだけど。


お互い後に嬉しい事が待っていると、予想以上の力が出るんだろうか?

その度に天の声の中村アナも『山の日だからですかねぇ』と俺たちを褒めてくれる。

オープニングトークの前フリ効果が存分に発揮された。

それに煽られる形で、客席からも黄色い声援も多かった。


よし、準備は整った。


さてと……アイツらはどうする?


俺と翔ちゃんは目を何度も合わせる。


どっちが先に動く?

どっちが先に動いてくれる?


もどかしいけど、楽しい無言のやりとり。


『翔くん』

そんな中、感情が読み取れない声で松潤が名前を呼んだ。


俺はあえて目線を向けることなく、帰る準備を続けた。


『何、じゅ……んっ!』

嬉しそうに返事した翔ちゃんの声は途中で途切れた。


えっ?

嘘だろ?


思わず後ろを振り返ると、松潤が翔ちゃんにキスしてた。

ビックリして目が見開いてる翔ちゃん。


松潤がこんな行動とるなんて予想外だ。


楽屋でなんて……

ましてや誰かがいる前で……


って、完全に俺とニノ邪魔じゃない?


取りあえずニノを連れて楽屋から出なきゃ。

「ニノ……わっ!」

振り返っていた首を前に戻すと、目の前にニノの顔が飛び込んできた。

「大野さん」

少し潤んだ瞳で俺を見つめる。

そしてゆっくりとニノの顔が近づき、唇が触れた。


うっ、嘘だろ……


俺も翔ちゃん同様、目を見開いてニノのキスを受け止める。


キスしてる時、ニノってこんな顔してるんだ。


琥珀色の瞳は瞼に隠され、長いまつ毛がより目立っていた。


そしてなによりも……

初めてニノからキスしてくれた。


『ねぇ、大野さん』

触れ合っていた唇から、俺を名を呼ぶ甘い声。


『もっと……キスして?』


頬を赤らめて、初めて俺にキスを求めた。

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