まだ見ぬ世界へ
第3章 幸福論【序章】
「施設に預けられた人が出産して、生まれた子がもし『Ω性』を持っていた場合……どうなるか知っているか?」
その質問に俺は首を横に振った。
考えもしなかった。
生まれた子どもがどうなるかなんて……
「その施設で……育てられる」
その言葉が意味するもの。
それは生まれてすぐに未来が決まるという事。
母親と同じ、子どもの生む道具。
その未来が……俺には待っていた。
「姉はきっと和也に同じ思いをさせたくなかった。だから和也を連れて施設から逃げた」
「なんで……何でそう思うの?」
俺にとってそんな都合のいい解釈なんてあるの?
ましてやそれを肯定できる根拠は何一つない。
「姉とその写真の男性が引っ越してきた時には赤ん坊だった和也も一緒だったらしい。それに写真を撮られることをかなり嫌がったらしいんだ」
「写真…を?」
その地域は近所付き合いが深く、集まってバーベキューなどをする機会も多かったらしい。
その中で写真を撮ったりすることはごく自然な事だけど、2人は写る事をずっと拒み続けていた。
でも1枚だけ撮ってほしい。
急に頼まれて撮ったのが……この写真。
「だぶん姉は施設から逃げたんだ。和也と一緒に」
俺と……逃げた?
「施設のヤツらが和也を取り戻すために追ってくるのは予想できた。だから居場所がばれないように名前を変えたり、自分の存在を形に残さいようにしたんだ。」
「俺が……『Ω性』だから」
「あぁ、そうだ。情報が漏れれば、おしまいだ」
そんな事……信じられない。
でも……
もし……
父が話す憶測が事実であれば、2人の行動にすべて説明がつく。
もし自分が逃げたいなら、俺を身籠る前にとっくに逃げている。
けど俺はすでに生まれていた。
『男』そして『Ω性』を持つ者として。
でもそんな俺を連れて……この人は逃げた。
自分の名前、そして自分の存在を捨ててまで……
「なん…で…」
「和也の未来を守るためだ」
迷いの無い父の言葉はスッと俺の心に染み込んでいった。
その質問に俺は首を横に振った。
考えもしなかった。
生まれた子どもがどうなるかなんて……
「その施設で……育てられる」
その言葉が意味するもの。
それは生まれてすぐに未来が決まるという事。
母親と同じ、子どもの生む道具。
その未来が……俺には待っていた。
「姉はきっと和也に同じ思いをさせたくなかった。だから和也を連れて施設から逃げた」
「なんで……何でそう思うの?」
俺にとってそんな都合のいい解釈なんてあるの?
ましてやそれを肯定できる根拠は何一つない。
「姉とその写真の男性が引っ越してきた時には赤ん坊だった和也も一緒だったらしい。それに写真を撮られることをかなり嫌がったらしいんだ」
「写真…を?」
その地域は近所付き合いが深く、集まってバーベキューなどをする機会も多かったらしい。
その中で写真を撮ったりすることはごく自然な事だけど、2人は写る事をずっと拒み続けていた。
でも1枚だけ撮ってほしい。
急に頼まれて撮ったのが……この写真。
「だぶん姉は施設から逃げたんだ。和也と一緒に」
俺と……逃げた?
「施設のヤツらが和也を取り戻すために追ってくるのは予想できた。だから居場所がばれないように名前を変えたり、自分の存在を形に残さいようにしたんだ。」
「俺が……『Ω性』だから」
「あぁ、そうだ。情報が漏れれば、おしまいだ」
そんな事……信じられない。
でも……
もし……
父が話す憶測が事実であれば、2人の行動にすべて説明がつく。
もし自分が逃げたいなら、俺を身籠る前にとっくに逃げている。
けど俺はすでに生まれていた。
『男』そして『Ω性』を持つ者として。
でもそんな俺を連れて……この人は逃げた。
自分の名前、そして自分の存在を捨ててまで……
「なん…で…」
「和也の未来を守るためだ」
迷いの無い父の言葉はスッと俺の心に染み込んでいった。