まだ見ぬ世界へ
第3章 幸福論【序章】
「ただ和也を……最後まで守ることは出来なかった」
父は歩き出すとテーブルに置いていた『日本プラチナデータ機構』の封筒を乱暴に丸め潰した。
「すまない……和也。こればかりはどうすることも出来なかった」
「止めて、父さん!」
父が俺に頭を下げて謝る必要なんてない。
自慢じゃないけど……
父は『α性』からも一目置かれる存在。
一代で会社を大きくし、国を支えている企業のひとつにまで上り詰めた。
けどそこまでの地位と名誉があっても……
そして会社内でのΩ性の待遇を、α性とβ性と平等にしたって……
『国』における『Ω性』の置かれている状況は変える事ができない。
でも……
「もう……十分だよ、父さん」
本当なら俺はここにいなかった。
施設という『檻』の中で生きていたんだ。
暗い、暗い、出口のない闇の中で……
俺は母から受け取った写真を見つめる。
この人たちが命懸けで俺を『外の世界』へ連れ出してくれた。
「父…さん、母…さん、ありが…とう」
写真をギュッと胸に当てて抱きしめた。
そして再び施設という『檻』に連れ戻された俺を、父と母は救ってくれた。
『外の世界』に居続けさせてくれた。
「父…さん、母…さん、俺を引き取ってくれて……ありがとう」
俺の言葉に母は泣きながら首を横に何度も振っている。
お願い、自分を否定しないで?
だって俺、今まで幸せだったから……
「和也、諦めるな」
「……えっ?」
「これから和也の進む道は決まっている」
そう、俺はマッチングシステムでピックアップされた3人のうちの誰かと結婚、そして『番』という関係になる。
「でも……その道にある『幸せ』を諦める必要なんかないんだ」
「そうよ、和也」
まるで俺の心を見透かしたような言葉。
でも決して一時的な慰めや、その場しのぎの言葉じゃない。
誰よりも母と父が諦めていないんだ……
父は歩き出すとテーブルに置いていた『日本プラチナデータ機構』の封筒を乱暴に丸め潰した。
「すまない……和也。こればかりはどうすることも出来なかった」
「止めて、父さん!」
父が俺に頭を下げて謝る必要なんてない。
自慢じゃないけど……
父は『α性』からも一目置かれる存在。
一代で会社を大きくし、国を支えている企業のひとつにまで上り詰めた。
けどそこまでの地位と名誉があっても……
そして会社内でのΩ性の待遇を、α性とβ性と平等にしたって……
『国』における『Ω性』の置かれている状況は変える事ができない。
でも……
「もう……十分だよ、父さん」
本当なら俺はここにいなかった。
施設という『檻』の中で生きていたんだ。
暗い、暗い、出口のない闇の中で……
俺は母から受け取った写真を見つめる。
この人たちが命懸けで俺を『外の世界』へ連れ出してくれた。
「父…さん、母…さん、ありが…とう」
写真をギュッと胸に当てて抱きしめた。
そして再び施設という『檻』に連れ戻された俺を、父と母は救ってくれた。
『外の世界』に居続けさせてくれた。
「父…さん、母…さん、俺を引き取ってくれて……ありがとう」
俺の言葉に母は泣きながら首を横に何度も振っている。
お願い、自分を否定しないで?
だって俺、今まで幸せだったから……
「和也、諦めるな」
「……えっ?」
「これから和也の進む道は決まっている」
そう、俺はマッチングシステムでピックアップされた3人のうちの誰かと結婚、そして『番』という関係になる。
「でも……その道にある『幸せ』を諦める必要なんかないんだ」
「そうよ、和也」
まるで俺の心を見透かしたような言葉。
でも決して一時的な慰めや、その場しのぎの言葉じゃない。
誰よりも母と父が諦めていないんだ……