まだ見ぬ世界へ
第4章 幸福論【登場人物】
「俺……どうしたらいいんだろう?」
母を見送った玄関で後ろに立つ三田園さんにふと問いかけた。
「結婚すればいいんじゃないでしょうか?」
「はっ?何言って……」
思ってもみなかった回答に慌てて振り返ると、三田園さんはすでに俺に背を向けてリビングへと向かっていた。
「ちょっと待ってよ、そんな簡単に……」
「簡単な事ではないです。でもそれは智さまが一番おわかりではないのですか?」
ピタッと止まり、首だけ回して俺を見る三田園は迫力満点でたじろいてしまう。
「わかってる。わかってるけど……」
乱暴に頭を掻きむしると三田園さんの横を通り抜けて、一目散にソファーに向かい、ゴロンと寝ころんだ。
ここは作品に煮詰まったりした時に休む場所。
身体の力を抜いて瞼を閉じる。
『兄さん』
俺を呼ぶ和也の声。
そして描きたいと思っていた笑顔。
「智さま」
三田園さんに呼ばれて瞼を開けると、目だけが書かれた大きなキャンバスを持っていた。
それは紛れもなく……俺を見つめていた和也の綺麗な瞳。
「失礼します」
「…えっ?ちょっ、待てっ!」
俺に頭を下げると、カッターでキャンバスを切り裂いていく。
「やめろって!」
手首を掴んでも力負けして止める事ができない。
「もう、これでは描けませんね」
「当たり前だろーが!」
怒りに任せて三田園さんの身体を押したけどピクリともしない。
何なんだよ、マジで……
「でしたら……また描いてください」
ソファーの後ろから新しいキャンバスを出してきた。
「過去の和也さまではなく、今の和也さまを……きっと以前より素敵な絵が描けると思いますよ?」
さっきまでの乱暴な行動をした三田園さんは、優しく俺に微笑んだ。
あの時も今も……
身体を張って俺のために行動してくれた。
また俺は……三田園さんに救われたよ。
「当たり前だろ?」
「ふふっ、そうでございますね」
どうなるかはわからないけど……
ずっと止まっていた一歩を踏み出す決意をした。
【→To next alpha】
母を見送った玄関で後ろに立つ三田園さんにふと問いかけた。
「結婚すればいいんじゃないでしょうか?」
「はっ?何言って……」
思ってもみなかった回答に慌てて振り返ると、三田園さんはすでに俺に背を向けてリビングへと向かっていた。
「ちょっと待ってよ、そんな簡単に……」
「簡単な事ではないです。でもそれは智さまが一番おわかりではないのですか?」
ピタッと止まり、首だけ回して俺を見る三田園は迫力満点でたじろいてしまう。
「わかってる。わかってるけど……」
乱暴に頭を掻きむしると三田園さんの横を通り抜けて、一目散にソファーに向かい、ゴロンと寝ころんだ。
ここは作品に煮詰まったりした時に休む場所。
身体の力を抜いて瞼を閉じる。
『兄さん』
俺を呼ぶ和也の声。
そして描きたいと思っていた笑顔。
「智さま」
三田園さんに呼ばれて瞼を開けると、目だけが書かれた大きなキャンバスを持っていた。
それは紛れもなく……俺を見つめていた和也の綺麗な瞳。
「失礼します」
「…えっ?ちょっ、待てっ!」
俺に頭を下げると、カッターでキャンバスを切り裂いていく。
「やめろって!」
手首を掴んでも力負けして止める事ができない。
「もう、これでは描けませんね」
「当たり前だろーが!」
怒りに任せて三田園さんの身体を押したけどピクリともしない。
何なんだよ、マジで……
「でしたら……また描いてください」
ソファーの後ろから新しいキャンバスを出してきた。
「過去の和也さまではなく、今の和也さまを……きっと以前より素敵な絵が描けると思いますよ?」
さっきまでの乱暴な行動をした三田園さんは、優しく俺に微笑んだ。
あの時も今も……
身体を張って俺のために行動してくれた。
また俺は……三田園さんに救われたよ。
「当たり前だろ?」
「ふふっ、そうでございますね」
どうなるかはわからないけど……
ずっと止まっていた一歩を踏み出す決意をした。
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