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まだ見ぬ世界へ

第4章 幸福論【登場人物】

【α性の男①】


「これだけの利益を生み出すとはさすがだな……」

目の前の札束に緩む顔が抑えられないらしい。


なぁ……その言葉の後には何が続く?


『α性だな』か?

『櫻井くんだな』か?


あんたはどっちなんだよ。


「噂以上の仕事ぶりだよ。やっぱり生まれ持った『α性』の才能は違うな」

「……ありがとうございます」


やはり、前者か。


「社長ほどではございませんよ」

「ははっ、キミは冗談が上手いな」

大袈裟に笑って見せる姿に溜め息を抑えて、ニコッと営業スマイルを見せた。


冗談?

それはこっちのセリフ。


大噓だっつーの。


誰がお前なんかに負けるかよ。


あと俺の名前は『キミ』じゃねーよ。

名前くらい覚えろ、バーカ。


「また、よろしく頼むよ」

手を伸ばし握手を求めてきた。


なんだ、その儀式?

一緒に頑張った風を出すんじゃねーよ。


まぁ、いい。

あんたがまた来てくれればまた懐が潤うからな。


「はい、ぜひよろしくお願いいたします」

気持ちだけ強い力を込めて握手を交わした。







「ホント、爽やか好青年っすね」

「うっせー。パソコンから目を離すな」

きつく結んだネクタイをクッと緩める。

「大丈夫っすよ、今は落ち着いてますんで」

モニターに映し出された折れ線グラフは確かに前半上下していたものの今はほぼ平行線。


これは売るタイミングを見計らってるな……


「その油断が命取りだぞ。そろそろ売っとけ」

トイレでも行こうとしたのか、立ち上がった身体を無理やりパソコンチェアに座らせる。

「えっ?マジっすか?」

疑いつつも俺の言葉通り、素早いタイピングで持ち株全部を一瞬で売った。

「うわぁ、マジ……すげーっす」

売って暫くすると、平行線だった折れ線はガクッと下がった。

「そーでもねーよ」


コイツだけは、後者。

ちゃんと『俺』を認めてくれている。

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