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まだ見ぬ世界へ

第4章 幸福論【登場人物】

「潤はどうする?」

「行こうぜ、ヤれてスッキリするぜ」

「いや、いい」

期待の目で見られたって俺の答えは決まってるし、下衆な会話に入る自分にさえ嫌気がする。

なら、コイツらと居なきゃいいんだけどそれは出来ない。

コイツらに何の価値もないけど、バックにいる親は違う。

実力を伴っているのかは別として、大企業のトップだったり大学病院の医院長だったりと国に影響力のある存在。


そしてそれはコイツらも同じ。


「ちぇっ、つまんないの。毎回、断るよな?」

「……悪いな」

思ってもいない事、さらには何で謝罪をしなきゃいけないんだ。

「もしかして……上物とか特別に回してもらってる?」

「……は?」

無意識に俺は馬鹿げた事を言うヤツを睨んだ。

「施設長だったら、それくらい出来……」

「てめぇ、ふざけんじゃねーぞ!」

事実無根なうえ、人をモノのように扱う発言に日頃の怒り相まってついに爆発した。

「ちょっと、落ち着つけって!」

胸倉を掴んだ腕を必死に引き剥がそうとするけど、力はどんどん増していく。

「喧嘩はまずいって」

「わかったよ…っ」

まだ収まらない怒りをぶつけるように離すと同時に突飛ばしたら尻餅をつく。

「ゲホッ、ゴホッ…冗談…だよ」

涙目で俺を見る姿に自分が発した言葉に対しての反省は微塵もない。

寧ろ、なんで怒ってんだって思ってる。

「……………思ってねーくせに」

「えっ?」

「ちょっと頭冷やしてくる。じゃあな」

「おい、ちょっと待てよ!」

引き留める声に振り返る事なく、俺らのやり取りに集まった野次馬の間をすり抜けて足早に大学を出た。


『冗談なんて思ってもないくせに』


確かに親父ならアイツの言う通りの事ができる。

だからこそ、あんな最低な発想が生まれる。


でも本当にアイツらだけが『最低』なのか?


あの場所があるからこそ、ヤツらは『最低』になるんじゃないか?



元凶は……親父だ。


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