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まだ見ぬ世界へ

第4章 幸福論【登場人物】

「あの女と子どもだけがいる夜中にボヤ騒ぎを起こし、避難している所を連れ去ろうとしたんだが……予想外に火の勢いが早くてな」

何の悪びれもなく、仮にも息子てある俺に自分の悪事を話すその神経は到底理解できない。

そもそも悪事だなんて微塵も感じていない。

「β性は火の加減すらも出来ない低能だ。大金叩いてやったのに……それに見合う事も出来ない。そのせいで優秀な『Ω性』が死んだ。まぁ、助けに行ったあの男も死んだから結果オーライだったけどな」


何が結果オーライだ。


ふざけるな!


軽い言葉で片づけるんじゃねーよ!


お前のせいで……

お前のせいで……

何人の人生を犠牲にしたんだ!


大金を叩いた?

本当は口止め料だろ?

いつもの様に弱みに付け込んで脅し、無理やりやらせたんだ。


そしてそうまでして連れ去りたいと思っていた人を燃え盛る炎から助ける事もせず見殺しにした。

助けようとした人までも巻き込んで。


きっとそんな事態になるなんて火を点けた人も思っていなかった。

お前のせいでその人は人殺しになった。



全部、全部……お前のせいだ!



「それにあの男は身体を張って『Ω性の子ども』を救い出した。そして両親がいなくなった『Ω性の男』が施設に……俺の元に戻ってきた。それなのに、急にしゃしゃり出てきた女の弟が俺から奪ったんだ!」


奪った?

どの口が言ってんだ!


この人たちだけじゃない。

お前は多くの人の未来を奪ってきたんだ!


そんなお前が……

命を懸けて守ったこの人の未来を奪う権利はない。


「でも神様は俺に味方した。お前と籍さえ入れれば……コイツは俺のモノだ」

立ち尽くしたままの俺の手から紙を奪い取る。


もし本当に神様という存在がいるのなら、きっとこんなことはしない。


悪魔が……悪魔に味方したんだ。


「わかってるな。どんな手段を使ってでも俺の元へ連れて来い」


その悪魔が……俺に命令した。

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