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まだ見ぬ世界へ

第4章 幸福論【登場人物】

【β性の男】


「主任、確認お願いします」

「主任は止めろって言ってるだろ?」

持ってきた書類を受け取って内容を確認していく。

「あー、そうでした!すみません、主任」

「おい……ワザとだろ」

「へへっ、バレました?」

目を通していた書類から視線を上げると、悪戯っぽい笑顔を俺に向けていた。


人によっては上司に向かって……なんていう人もいるだろう。

それは間違ってはいない。

上下関係や、年上を敬うというのは人生の先輩に対しての礼儀ではあると思う。

でもそれは人それぞれで……

肩書きって程でもないけど、それで気を遣われたり気を遣ったりするのは俺は好きじゃない。

それに年上って言うほど年齢も離れてはいないしね。


「そんな暇があったら、ここ直せ」

トントンと指で間違いの箇所を指摘する。

「間違って……ますね」

「完全に一桁、間違ってるな」

「……すみません」


さっきまでのテンションはどこへやら……

明るいヤツほど、ちょっとのミスに凹んじゃうんだよな。

そしてそれに引っ張られてしまう。


「確認は怠るなよ?せっかくのいい企画が台無しだぞ」

「えっ?」

「このまま、進めてくれ」

「はいっ、ありがとうございます!」

注意をしつつも、出来ている事はしっかりと褒める。

なんでも口に出さないと伝わらない。


それはいい事であっても、悪い事であっても同じ。


「だだいま、戻りました」

元気よく外回りから戻ってきたその姿の後ろに、明らかに不機嫌な顔をした姿。


これは……まずいな。


「お疲れ様、どうだった?」

デスクに座る2人にコーヒーを置くと、いつも通りに声をかける。

「んー、手応えはイマイチっすね」

天井を見上げる姿はその結果に少し納得がいかないようだ。

「そっか、悪くなかったんだけどな……」

「あんなバカに……理解なんて出来ないんですよ」


その言葉にオフィスの空気がピーンと張り詰めた。

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