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まだ見ぬ世界へ

第4章 幸福論【登場人物】

世の中の大多数の『α性』は、『β性』そして『Ω性』を見下している。

『α性』の自分が優秀で、一番だって。

それはきっと幼少期から積み重ねてきた経験、そしてその全ての結果が証明している。


俺だって運動神経に関してはβ性の中ではいい方だった。

でもα性には太刀打ちできなかった。


β性も同じように幼少期から積み重ねてきた経験、そしてその全ての結果がα性には勝てないって証明されている。

だからこそ、その結果を覆そうとは思わなかった。


そんな俺でも『Ω性』に対しては同情していた。

いや……下に見ていたという方が正しい。


『発情期』という特殊な体質。


その期間は学校を休まなければならない。

その期間は会社を休まなければならない。


その体質のせいで……α性に襲われる危険性だってある。


『α性に生まれたかった』と思う事はあっても、『Ω性に生まれたかった』と思う人は誰もいない。

『Ω性じゃなくて良かった』と誰しもそう思う。


特に『Ω性の男』に対して男はそう思ってた。



でも俺はそんな『Ω性の男』を好きになった。



そして俺は、告白した。


男が男を好きになる。

俺にとってはそれが普通だけど、世間では誰しもが受け入れられる事ではない。


だからずっと想いを口にすることはなかった。


でも、この人なら俺の気持ちを受け入れてくれるんじゃないかって思ってた。

そして『OK』を貰えるんじゃないかって思ってた。



『Ω性の男』を好きになる人なんていない。



そう思ったからこそ、告白できた。



でもその期待は返ってきた答えに見事に打ちのめされた。



『僕の価値を見出してくれるのはα性だけ。β性にどんなに想われても僕にとって何の意味もない』



その言葉で俺は思い知った。


『Ω性』にとって『β性』は何の価値もない存在。

そして『Ω性』が下に見ていたのは、『Ω性』を下に見ていた『β性』だって。

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