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まだ見ぬ世界へ

第5章 さよならの恋人

「冷静だなって思ってるでしょ?」

「えっ、あ…うん」

注文していた料理が届き、ちょこちょこつまんでいると潤くんがいきなり話をブッ込んできた。


まぁ、俺から話を振る事はないから潤くんが振ってくるの当たり前だけどね。


「俺もさ、同じような事を考えた時期があったからさ……受け入れられたって部分はあると思う」

昔って程でもないけど……

数年前にそんな話が潤くんの口から出た事があった。


嵐として初のアジアツアー、凱旋公演では初の東京ドーム。

2回目のアジアツアー後には、初の国立競技場でのライブ。


そしてたくさんの方にお祝いして頂いた10周年。

ある意味で集大成の部分はあった。


『嵐』としてやりたいこと、目標にしてきた事が叶った。


そんな時、潤くんから『自分たちがいい形であるうちにグループをしめる』という考えがある事を俺たちに打ち明けた。

潤くんが言っていることもわかる。

日本には『終わり良ければすべて良し』だったり『有終の美』といった美学がある。

潤くんにとってそれがその時期だったのかもしれない。


でもその時は……あくまでも考えのひとつだった。


今回は……そうじゃない。


「潤くんは解散しても……いいの?」

「随分とストレートだね」

クスッと笑うとビールをゴクりと口に流し込む。


今の俺には回りくどい言い方を考える頭の回転の速さは持ち合わせていない。


「グループはさ、やっぱりメンバーの強い意思があってこそ続けられるものだと思う。そこが俺は重要だから……」

「それは潤くんだけじゃないよ」

「……そうだな」


それはみんなの共通認識。

だからこそ、きっとリーダーはあの決断に至った。


それをわかっていても……

リーダーの気持ちを汲み取ったとしても……


『はい、そうですか』なんて簡単に返事なんて出来ない。


でももう答えは……出てるんじゃないか?

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