まだ見ぬ世界へ
第5章 さよならの恋人
ピンポーン…
「はーい、どうぞ」
腕捲りをした相葉さんが爽やかに出迎えてくれる。
その理由は家に入った瞬間から漂う香りですぐにわかった。
「ご飯、まだでしょ?」
「うん、まだ」
ソファーに荷物を置くと、ジューッと肉の焼ける音。
その音は作っていたしょうが焼きを温めている。
「手、洗ってきなよー!」
千切りキャベツを盛りつけた皿にしょうが焼きを乗っける。
そして手際よくお碗にご飯をよそうと、次はスープのよう。
「母ちゃんかよ」
いや、旦那か?
……キモッ。
「えっ?何か言った?」
「いや、別に」
自分の言葉に自分でツッコんで処理しておいた。
そんな中でも相葉さんは、せっせせっせと準備をしていく。
「俺も手伝うよ」
「ホント?ありがとう」
手を素早く洗い終えると、キッチンに立つ相葉さんの所へ向かう。
相葉さんはメンバーの中でレギュラーが一番多い。
そして仕事内容としてはロケが大半を占める。
だから忙しくてしんどいはずなのに……
こうやってたまに俺を誘ってご飯を作ってくれる。
前に食事に誘ってくれた潤くんもだけど、相葉くんは特に
ジュニアからの長い付き合いだから俺の事をよくわかってる。
俺が食事をとらない事、たまに取っていたとしても同じモノばっかり食べて栄養が偏る?
いや、栄養が足りてない事を……
特に今はね、うん……食べてないかも。
「あー、腹減った。もう作ってる時から、お腹鳴りっぱなし」
でもそれは……相葉さんも同じような気がする。
まぁ相葉さんは俺と違って友達が多いから当然、お誘いも多い。
だから食べてるとは思うんだけどね。
でも一人ってなると、誰かのために作るとか理由がないと食べないのかもって。
「あー、俺も腹減った」
「じゃんじゃん、食べてねー」
「美味しかったらね」
「もー、好きなくせに」
その理由に俺が選ばれるなら……喜んで食べるよ。