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まだ見ぬ世界へ

第5章 さよならの恋人

「俺さ、まだ色々とグルグルしてるんだけどさ……」

あっという間にご飯を平らげた俺たち。

今はソファーでスマホゲームをする俺と、キッチンで洗い物をする相葉さん。

ご飯を食べている時は他愛もない話をしていた。


たぶん、お互いに探ってた。

今、あの話をしていいのかって……


付き合いが長ければ長いほど、真剣な話って殆どしなくなるし、いざその場面が来たとしても切り出すことが出来ない。

妙に……緊張するんだよね。


「嵐を続けたいって気持ちは変わらないし、これからも変わらないと思う」

「うん」

滅多に打つことのない相槌。


それはちゃんと聞いてるよって、相葉さんに伝えるため。


「でもちょっとでも同じ方向を向いてないリーダーをずっと付き合わせるのは違うのかなって……そう思うんだ」


嵐は誰か一人の意思で動くグループじゃない。

どんな些細なことでもみんなで話し合って、納得した上で決めてきた。


でも今回ばかりは……

みんなの意志がバラバラだ。


「じゃあ、相葉さんは解散しても……いいの?」

潤くんと同じ質問を相葉さんに投げ掛けた。


どんなにバラバラであってもひとつの答えを出さなきゃいけない。

でも相葉さんが意見を押し付けず、リーダーの意見を受け入れるのであれば、この道しかないんじゃないの?


「それは絶対に……嫌だ」

強い意思の籠った言葉。


リーダーの意思を尊重した気持ちは絶対にあると思う。

だって、相葉さんは優しい。


相手が嫌だと思う事は決してしない。

それがメンバーだったら尚更、思う部分がきっとある。


そんな相葉さんでも譲れないモノ。



それが『嵐』という存在、そして5人でいること。



ずっと嵐として頑張ってきた。

それは相葉さんだけじゃない。

俺も翔くんも潤くんも、そしてリーダーも。


洗い物を終えた相葉さんが俺の隣に座る。

「難しい……よね」

「うん、難しいね」


やっぱり答えは……出なかった。

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