まだ見ぬ世界へ
第5章 さよならの恋人
「ごめん、遅くなって」
「ううん、俺も今来たとこ」
先に店についていた俺に手を合わせて謝る翔くん。
「まずはビールと軽くつまめるもの頼むか」
「そうだね」
パラパラっとメニューを捲っていると、おしぼりとお冷を持ってきた店員さんが入ってくる。
「とりあえずビールと……」
いつも思うけど、本当に無駄のない行動だなって思う。
店員さんが来た時に注文すればわざわざまた呼び出さなくてもいいからね。
「ふー、疲れた」
「もー、おじさんじゃないんだから」
店員さんが出ていくのを見計らって、わしゃわしゃとおしぼりで顔を拭く姿に思わず笑ってしまった。
「みんな、同じツッコミするな」
「そりゃそうでしょ」
『みんな』という言葉。
翔くんはリーダーの意思を聞いて以降、それぞれに会ったりして色々と話をしている。
その度に、ツッコまれているんだろう。
「大丈夫?」
「えっ?なにが?」
目をパチパチさせて俺の心配を不思議がる。
今の、翔くんは死ぬほど忙しい。
ドラマの撮影、24時間テレビの取材、音楽特番。
そしてそれに伴う事前の準備。
俺なら身体がいくつあったって足りない。
ホント、タフすぎ。
「ううん、なんでもない」
でも……心配くらいはさせてよ。
だって俺が出来ることはこれくらいしかない。
今の翔くんの役目を俺が代わりにすることは出来ない。
相葉さんでも潤くんでもそれは同じ。
翔くんしか出来ない。
「お待たせしました」
料理は手早く調理できるものばかりで、あっという間に注文したモノがテーブルに並んだ。
今日はガッツリ……かな?
「じゃあ、まずは乾杯だな」
「うん、そうだね」
乾杯し過ぎか、し慣れてしまったのか……
音頭を取る事なく互いにグラスを当てるとビールを流し込む。
「くぅー、やっぱり仕事終わりのビールは最高っ!」
「やっぱ、おっさんだね」
あっという間にビールは半分まで減った。