まだ見ぬ世界へ
第5章 さよならの恋人
「ねぇ、この後……予定ある?良かったら、ご飯行かない?」
「ん、いいよ」
2人での雑誌撮影を終え、充電しながらスマホを弄るリーダーに声をかけた。
いつもなら用事が無くたって返事に迷ったり、特に俺の場合はズバッと断ったりするけど、今日は即答でOK。
まぁ……誘っている理由をわかってるからね。
「焼肉でも……いく?」
「それは嫌」
「俺も嫌」
「なら言うなよ」
ちょっとでも暗い雰囲気にならないように冗談を言ってみた。
これからする話は決して楽しいものではないから……
「で、どこ行く?」
「んー、どうしよう」
俺から誘ってご飯に行くなんて滅多にない。
だから潤くんや翔くんの様に店のセッティングなんてしていないし、何より俺たちは食べ物に対して無頓着。
洒落た店なんて……当たり前だが知らない。
「俺ん家にする?」
考えたって何も出てこないし、家だったらそのままお開きになっても楽。
何よりお金……かかんないし。
って、こんな時でも染みついた金銭感覚は健在だ。
「いいの?」
「いいよ。チャージ料はサービスしてあげるからだからお酒、おつまみヨロシク」
「……それ、ズルくない?」
「それなら、リーダーん家にする?」
「それは無理」
「即答かよっ!」
そしてリーダーも変わらない。
でも毎回、断られたらさすがにちょっと傷つくぞ。
「もう、いいですよ」
俺は鞄にゲーム機をしまうと、リーダーもコンセントから充電器を外した。
「家でも充電していい?」
「電気代、ヨロシク」
「けちー」
ニヤっと笑って見せると、リーダーは口を尖らした。
このやり取り……違和感ありまくり。
いつのまにか収録で見せる俺たちのやり取りになってる。
俺も、そしてリーダーもたぶん緊張してるんだ。
「じゃあ、行きますか?」
「へーい」
先を歩く俺は、緊張和らげるためにフーッと静かに息を吐き出した。