まだ見ぬ世界へ
第5章 さよならの恋人
「お疲れ様」
翔くんの音頭に合わせて缶ビールを掲げる。
俺たちをねぎらう為に使ったその言葉……
一番似合うのは翔くんだよ。
あれから翔くんを中心に何度も何度も話し合った。
それそれの気持ちを伝え、そしてそれぞれの気持ちを共有した。
その中でも同じだった気持ち。
それは嵐は5人で『嵐』だという事。
誰が1人でも抜けてしまったら『嵐』ではない。
どんなつらい時みんなと一緒に支え合って歩んだ。
どんな困難だってみんなと一緒に乗り越えてきた。
そしてその先にあった素晴らしい景色をみんなと一緒に見てきた。
俺たちにとって『嵐』はかけがえのない存在。
リーダーの決意を聞いた今でもそれは揺るがない。
それは翔くんも、相葉さんも、潤くんも、そしてリーダーも同じ。
その想いが『解散』という選択肢のみだった俺たちに、『活動休止』という選択肢を増やしてくれた。
そしてその選択肢を全員が納得した上で選んだ。
活動休止後も翔くん、相葉さん、潤くん、俺は今まで通り、個々の芸能活動を続ける。
リーダーは2021年から芸能活動も休止。
俺たちはリーダーの想いをちゃんと受け止め、その想いを尊重することが出来た。
でもその中でリーダーがその想いを実現するためにけじめとしていた嵐を辞める事、そして事務所も辞める事はなくなった。
これが俺たちの導き出した着地点。
ただ、これが正しいかどうかはわからない。
あくまでも『嵐』が……という事。
ある程度の話が纏まった段階で事務所の上層部に報告したので、反対されることは無かった。
まぁ、ほぼ決定事項として伝えたからね。
でも……ファンのみんなは違う。
まだ先の話だとはいえ突然、『活動休止』を突きつけられるんだ。
そして俺たちと違ってその事実を変える事は出来ない。
全てを受け止めなければならないんだ。