俊光と菜子のホントの関係
第2章 『俺と菜子』
「え、お前……そんなの、持ってたっけ?」
「んふふ。実はこの間、お母さんに買ってもらったんだー。
この服見た時、ポチャッとしてる私には無理かなーって思ったんだけど、店員さんが『絶対似合う』って推してくれて。それで試着したら、本当に似合っちゃって! お母さんも『可愛いー』って喜んでたんだよ!」
俺の気も知らない菜子は、無邪気に話す。
「そう……か。ふ、ふーん……」
「それに意外とゆったりしてるから、胸が強調されなくて嬉しいー。私、胸が大きいじゃない? ちょっとでもピッタリとした服着ると、メッチャ目立つんだもん。それでねー……」
お……落ち着け、俺。相手は中二の妹の菜子だぞ? ドキドキしてどうする!
でも――本当の妹じゃない……。
っ、バカか俺はっ! 菜子のいる前でそんなことを思うなっ!
血は繋がっていなくても家族なんだからっ!
菜子のいる前で、不謹慎なことを少しでも思ってしまった自分に対して、引っ叩きたくなった。
「……俊光君? どうしたの?」
「っ、え?」
俺、いつの間にか考え事ばかりしてた。
「もしかして……これ、変?」
ヤバい。菜子が不安そうだ。
「い、いや、変じゃないって」
「じゃあ……可愛い?」
「あぁ、かっ……あ……」
おいおい、ウソだろ……。
いつもスラッと言えてた言葉が言えない。言おうとしても、喉に物を詰まらせたみたいに苦しくなって出てこない。
「まぁ……いいんじゃない、か?」
「えー? 何それー! ハッキリしてなーい!」
「もういいだろ、早く行くぞっ」
「あーっ。待ってよー、俊光くーん!」
わざと菜子から冷たく目を反らして、先に階段を下りた。
違う……違うっ。俺は、菜子のことを妹だと思ってるんだ。
菜子のヤツが見慣れない格好をしたからだ。すぐに落ち着く。大丈夫だ。
今までにない菜子へのこの感情を、どうにか圧し殺したくて……自分に強く、強く、言い聞かせ続けた。