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俊光と菜子のホントの関係

第7章 『少しだけでも……』


「すみませーん、遅くなりましたぁー」


 と言う明里ちゃんと、明里ちゃんのあとをついてきた菜子が、俺達の前に着いた。

 明里ちゃんの浴衣は、白地にカラフルな牡丹の花柄。それと、帯は鮮やかなグリーン。全体的に爽やかな色合いだ。髪も、浴衣に合うようにアップしてある。


「へぇー。明里ちゃん、その浴衣似合ってるな」

「俊光さん、ホントですか? ありがとうございます!
 ……ん? ちょっと菜子。いつまで後ろにいんのよー」

「うぅ……。だってぇ、なんか恥ずかしいんだもん……」


 菜子のヤツ、明里ちゃんの後ろにピッタリくっついていて離れようとしない。俺の方へチラチラと視線を送っているものの、なかなか前に出てこない。


「何言っちゃってんのー、アンタらしくない。ほらほら、お兄様に見せてごらんなさいっ」

「ひゃあっ。ちょっと、明里ぃ……」


 明里ちゃんにずいっと前へ出された菜子の、浴衣姿を見た途端……

 俺は、思わず見張った。


 浴衣は、無邪気な菜子のイメージとは違う物だった。


 黒地に、赤色と淡いピンク色の二種の大きな椿の花が妖艶にあしらわれていて、帯は落ち着いたえんじ色。

 髪も短いながらも編み込みのアレンジがしてあり、左のこめかみ辺りには――前に俺があげた、小さなリボンとビジュー付きのヘアピンが……。


「んふふー。俊光さん、どうですか? 菜子のこの浴衣、ステキでしょう? ちなみに髪は、ワタシがアレンジしたんですよー」


 明里ちゃんに感想を求められるも、一言も……一文字すらも発することが出来ない。

 それぐらい、菜子の浴衣姿に心奪われてしまっている。


 菜子のことだから、ラブリーな物でも着てくるのかと思っていたのに、また俺のツボをつくような物を着てきやがって。

 何でコイツは要所要所で、俺の気持ちを揺さぶるんだよ。

 しかも、あげた物まで可愛く付けてくるなんて……。

 反則もいいところだ。




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