俊光と菜子のホントの関係
第2章 『俺と菜子』
四件目。菜子がルンルンしながら連れてきたところは――
「……え、ここか?」
「そう、ここ。入ろ!」
ここ、どう見てもメンズショップだぞ。
どうしてここに?
「ふんふんふーん、ふふふふふーん」
疑問に思う俺をよそに、菜子は楽しそうに鼻歌をふんふん歌いながら品定めをし始める。
「あ。これカッコ良くない? あー、これもいいなぁ。うーん……これはちょっと違うかなぁ?」
選ぶ物選ぶ物、どう見ても菜子には大きすぎだろ。
「なぁ菜子。それって……自分用なのか?」
「うーん……内緒!」
「あ、そ……」
店の感じからして若向きだから、父さんにあげるんじゃなさそう。
ということは菜子のヤツ、本当に男が出来たんじゃ……
ヤバ。またモヤモヤしてきた。
「ねぇねぇ俊光君。これ、どう思う?」
「っ、あ?」
「だーかーらぁ、『これ、どう思う?』って」
「あ、あぁ……」
菜子が嬉しそうに見せてきたのは、黒のロゴ入り長袖Tシャツ。
それが俺的には、結構ツボだった。
「うん……いいな」
って、おいっ、俺。なに素直に答えてんだよ。他の男へのプレゼントかもしれないってのに。
「でしょ? やっぱりカッコいいよねーこれ。どれどれー?」
わっ。
今度は俺の体に合わせてきた。
「あーやっぱいい! サイズもこれで良さそう。よし、これにする!」
「お、おい。そんなすぐに決めていいのかよ。誰かにあげるんだったら、その相手のサイズでよく確認した方がいいんじゃねぇの?」
「大丈夫だよ。このサイズで間違いなさそうだから。
すみませーん、これプレゼント用にお願いしまーす」
あー、買っちゃった。
なんだよ。結局こういうことか。こんな買い物だって知ってたら絶対行かなかったのに。
なんか、急激に面白くなくなってきた。
それでもこの嫉妬心は悟られたくないから、普通でいるように表情を保ち続けたけど……。