俊光と菜子のホントの関係
第7章 『少しだけでも……』
「――ところで俊光よ。お前、さっきのザマは何だ? 浴衣姿は見慣れてたんじゃなかったのかぁ?」
智樹から、駅前で合流した時のことを突っつかれると思い出してしまい、ふいに顔が熱くなった。
「うっ……。あれは、不可抗力だって。予想外の柄だったし、似合ってたしで……」
「ほらなー。だから言っただろ? 気持ちが変わってから見るのとは違うって。けどそうでなくても、あの浴衣姿はヤバいかもなー。菜子ちゃん、ロリ顔の巨乳だし」
「ロリ顔の巨乳って、お前っ……菜子にAVみたいな表現を使うんじゃねぇよっ」
そんな表現はしないにしても、確かにアイツの胸は目立つ。帯に乗っかっているみたいな、そんな感じだ。
その辺もなるべく意識しないようにしてたのに……。何でコイツは俺を煽るようなことを言うんだよっ。ただでさえ欲が沸きかけたってのに。そんなに俺から兄の免疫を無くしたいのかっ?
黙って智樹を恨めしく見たら、軽く笑われた。
「ははっ、悪い悪い。ついからかっちまった。
けど、マジで気をつけないとな。明里ちゃんも砂糖顔で可愛らしいから、二人から離れない方がいい。じゃないと、変な野郎に狙われるぞ」
「あぁ……そうだな」
智樹の言うとおりだ。中には、絶対ナンパ目的のヤツだっている。しかも、この人の多さだ。はぐれてもスマホで居場所は伝え合えるけど、身に何かあったら通話だけじゃ助けられないし――
「と、俊光さん、智樹さんっ!」
「……明里ちゃん」
明里ちゃんが困った顔して、俺達の元へとかけ寄ってきた。
……え? 明里ちゃんだけ?
「あれ? 菜子は?」
俺が問いかけると、明里ちゃんは気まずそうにしてから――
「それが菜子……さっき人とちょっとぶつかっちゃったら、浴衣の袖にジュースがかかっちゃって。
したら……それをお手洗いで洗ってくるとか言って、一人でとっとと行っちゃったんです……」
と、遠慮がちに打ち明けた。
…………は?
「あぁ!? 何だってぇ!?」
たった今、智樹とそのことについて気をつけようと話したばかりだったのに、早速かよっ!
勝手に一人で行動するなんてっ……。たくっ、無防備にも程があるぞ!