俊光と菜子のホントの関係
第7章 『少しだけでも……』
――あー良かった。ベタベタがなくなったー。
お手洗いから出て、改めて袖を確認した。
ジュースで濡れたのが下の方で良かったー。歩きながらブラブラ揺らせばすぐに乾くよね。
お手洗いの場所って、出店が並んでいるところから少し奥まった場所にあるから、人気(ひとけ)が全然ない。
電気も頼りない付き方で、何か良くないのが出てきちゃいそうなぐらい、暗くておどろおどろしい感じ……。こんなところでわざわざ用を足す人なんていないよね。まぁ、そのおかげで洗面を独占出来たからラッキーだったんだけど。
さてと、三人と合流しよーっと。スマホスマホ……。
その場で立ち止まって巾着をあさっていると、
「……ねぇ、君」
横から声が聞こえてきた。
「っ、へぇ?」
振り向くと――そこには知らない男の人が、ニヤニヤした顔で、私を見て立っていた。
だ……誰っ?
たぶん、二十代ぐらいかも。だけどこの人、格好がやたらチャラチャラとしてない?
同じチャラいでも、智樹さんは爽やかなチャラ具合だけど……
この人は、気持ち悪いぐらい無駄の多いヂャラヂャラ具合。
直感的に嫌な感じしかしないよぉー……。
だから私は、少し身構えちゃった。