俊光と菜子のホントの関係
第8章 『かけがえのない兄妹』
「っ、わっ!」
脚にドンッと衝撃が来た。
何事かと床の方を見てみると、水色の通園服を着た男の子が、後ろに手をついて座り込んで俺を見上げていた。
驚いてるのか、無垢な目が真ん丸と開きっぱなしだった。
この子、走り回ってた子だ。勢い余って俺にぶつかっちゃったんだな。
「大丈夫か?」
しゃがんで声をかけると、男の子は「うん」と答えた。
「気をつけろよー。他の子もいるからな」
あんまり怖がらせないように、柔らかく注意をした。
「はーい。ごめんなさーい」
やんちゃそうな子だけど、素直だし、ちゃんと謝った。思わず感心してしまう。
「……おにーちゃん、だいじょうぶー?」
男の子よりも更に小さい女の子が、心配そうにかけよってきた。
『おにーちゃん』ってことは、この二人兄妹か。
俺と菜子を重ねると、親近感が湧いた。
「だいじょうぶだよ。ちょっと ぶつかっただけだから」
「いたいくないのぉ?」
「ぜーんぜん、いたくも なんともねぇぞ! ほらなっ」
男の子が元気な素振りを見せると、女の子はホッとしたのか、「よかったぁー」と言って表情を綻ばせた。
「あっちにいこうぜっ!」
「うん!」
小さな兄妹は、仲睦まじく手を繋いで、中央の遊び場へと駆けて行った。
兄妹で手を繋ぐって微笑ましいよな……。小さい子なら尚更だ。
俺と菜子も、あれぐらいの時はよく手を繋いで歩いていたっけ。
とはいえ、つい最近も……手、繋いだけど……。
こんなところで花火大会での出来事を思い出して、顔が熱くなるという――自爆行為。