俊光と菜子のホントの関係
第8章 『かけがえのない兄妹』
「もーう。ワタシが切ってあげるって言ったのにぃー。
菜子がどうしたら可愛くなるかを一番よく知ってるのは、ワタシなのよ?」
そばでカットの様子を見ていた明里が、ローテーブルに頬杖ついてヤキモチやいてるー。
でもね、明里。『どうしたら可愛くなるかを一番よく知ってる』というわりには、大胆に『ジャッキン……』て切ったよね?
「だから明里はもうやだっ。せっかくここまで伸びたのに、また短くなっちゃうもんっ」
私は明里から髪を守るように、手で頭を隠した。
「あれはっ、晃がいきなり勝手に入ってきたからぁ……」
「そうでなくても、お前は…………コレだろ?」
晃君がベッドの下から、あの明里・作の、髪型ズタボロ首だけマネキンを取り出した。ひゃーっ、何回見てもリアルホラーだよぉーっ。マネキンさんが悲痛な面持ちに見えるのも、気のせいじゃないかもしれないね。ぞぞぉー……。
「お前は、専門学校でちゃーんと基礎を習ってからにしろ」
晃君は明里にイヤミを言いながら、首だけマネキンをまたベッドの下へと葬った。
「何よぉー。菜子にデレデレしてばっかのクセに、偉そうにしちゃってさぁー」
「べっ……別に、デレデレしてねぇだろっ」
「ふーん、どうだかねぇー?」
なんて口ゲンカをしていても、二人ともホント仲がいいよねー。って、思ったことをまんま口にした。
したら「仲よくないっ!」と、二人の否定的なセリフと感情が見事にハモる。
「スゴーい、息ピッタリ! さすが双子、ソックリなだけあるー!」
思わず拍手!
「菜子ー、そんなに面白がんないでよー。双子(ワタシ達)は見せ物じゃないのよ?」
「あははっ。だってピッタリすぎなんだもん」
ホント、いいなぁー。砂糖菓子のような甘い顔が二つ。見てて和んじゃう。ここまでソックリって、双子ならではだもんね。
ソックリ……そういえば、
双子じゃなくても、『きょうだい』ってどこか似てたりするけど――