俊光と菜子のホントの関係
第9章 『勝手にジェラシってる』
「――あぁ?
『菜子が最近、可愛く手を繋いできて困ってる』……だぁ?
それ、相談というより、ノロケにしか聞こえねーよっ」
今のは、准教授が来る前の大講義室で、俺の相談事を聞いた智樹からのつれないセリフだった。
つれないのはセリフだけでなく、顔すら合わせずにバックパックから必要な物を取り出しながら聞くという……。
確かに、智樹には菜子関連の相談事ばかり聞かせてるから、そういった面倒くさい態度になるのもわかるけど。それでも俺は聞いてほしくて、めげずに智樹にすがる。
「ノロケじゃねぇんだよ。本気で悩んでいて相談してんだよ」
「悩まなくていいんじゃねぇの? 菜子ちゃんは兄妹として手を繋いでるだけなんだろ? なら一緒になってニコニコ手ぇ繋いどけばいいじゃんか」
「それが出来たらこんなに悩んでないんだって。
そりゃあ、俺も花火大会の時は手を繋いだけど……まさか日常生活の中でも繋いでくるなんて思わなくて……」
アイツからしたら、小学生の頃と同じ感覚。
けど俺の気持ちは小学生の頃とは違う。兄妹としてだけじゃなくなってるんだ。
出来るなら俺だって繋いでいたい。嬉しいに決まってる。
だからなんだ。
手を繋ぐたびに想いが募ってしまい、菜子のことを独占してしまいたくなってきているんだ。
他のヤツを好きになってほしくない。
俺だけを見てほしい。
兄妹としてだけでなくて、恋人としても一緒にいたい。
……って、自己中心的なことばかり考えちゃってるんだよ。
菜子の自由な気持ちをどうこうする権利はないって思ってたのに、ふとした拍子にどうこうしてしまいそうで……。だから困ってるんだっつーのに。
「しっかし、菜子ちゃんもあどけない顔して罪なことをするもんだ」
「そうなんだよ。それがまた無自覚なのが余計にタチが悪いんだ……」
このままだと俺……菜子の高校卒業まで気持ちが抑えきれそうにないぞ。