俊光と菜子のホントの関係
第9章 『勝手にジェラシってる』
それからも、俺と菜子の険悪なムードは続いた。
駅に着いて電車から降りても、
改札を通っても、
商店街を通り越しても、
そして更に住宅街に差し掛かっても、状況変わらず。
俺の少し前で、地を強く踏みつけるようにツカツカと早歩きする菜子。その歩きっぷりが、怒りの度合いを示している。
ある程度歩いたところで、菜子が突然立ち止まって俺の方に振り返り、一言――
「……付いて来ないでよっ」
やっと言葉を発したと思ったら、それかよ。
「おんなじ家に帰るんだから、どうしたって付いていかなきゃいけねーんだよっ」
「ぐっ……。じゃあ、どっか寄り道すればいいじゃんっ」
「用もないのに寄り道なんかするかよ。お前こそ、俺に付いて来られるのが嫌なら、もっと早く歩くなり走るなりして引き離せば?」
「はぁ? 何で私が、そんな疲れるようなことをしなきゃいけないのよぉ。そんなら、俊光君が早く行けば?」
「嫌だよ。俺だって疲れたくねぇし」
それにな、こんなにムカついてても、お前を帰り道一人にするのが気が引けるって考えてしまっている、過保護な俺がいるんだよっ。
住宅街の道のど真ん中で、売り言葉に買い言葉をしても菜子を突き放しきれないという、自分の甘さ。
勝手にヤキモチ妬きすぎてるのだって、菜子を好きが故(ゆえ)のことだし……。
とはいえ、引くタイミングが掴めない俺は、そのまま菜子と睨み合いを続けるしかなかった。