俊光と菜子のホントの関係
第10章 『抑えきれなくて』
「…………全て悪いとは言わない。けどな、大半は……お前のせいだぞ」
とうとう気までおかしくなったのか、俺はカサカサするアレに向かって、人間相手のようにブツブツと話しかけ始めていた。
「お前は雄か? それとも雌か?
どっちにしても、人間の男が、好きな女の裸に近い格好を目の当たりにしたら、どうなるかぐらいわかるだろ?
なのに、何で菜子の時に現れるんだよ。もうちょっと我慢して身を潜めておけよ」
こんこんと訴えてから重々しく立ち上がると、脱衣所の隅にあるハエ叩きを手にして、そうっとアレに近づいた。
寒さに弱いからか、相当弱っている。いまだにガラス戸で這っているぐらいだもんな。盛んな暑い時期と比べると、もう死にかけてるみたいな動きだ。
コレを叩いたら、少しは欲が解消されるだろうか?
たぶん……少しも解消されないだろうな。
「それでも悪いけど……今日は思いっきりいくぞ」
八つ当たりをするように、ソレに目掛けて叩きを力いっぱい振りかぶった――