俊光と菜子のホントの関係
第11章 『一旦距離を置きたい』
父さんは、どういった経緯で俺の父親になったのかは知らないけど……父さんが血の繋がりのない俺を本当の息子として育ててくれたのは、奇跡に近いことだと思う。世の中には、そんな子供を受け入れられない人だっているのに、父さんは当たり前に愛情を注いでくれた。
今だって、夢精した心当たりはとか、そういう相手がいないのかとか、そういった詮索をしようともしないで無条件で寄り添ってくれて。
そんな父さんを想うと……簡単に菜子を汚すようなことをしてはいけないと考え直させられるな。
「父さん。ごめん……」
「え? 何で謝るんだ?」
「……何となくだよ。それと……ありがとう。俺、父さんが俺の父さんで、本当に良かったって思ってるよ」
照れ臭いけど、伝えたくなって口にしたら……父さんが一瞬固まった。
「と……俊光っ……!」
「わわっ。何だよっ」
ビックリした。急に抱きついてきたしっ。
同じぐらいの背丈だから、頬と頬が隣り合い、父さんのまだ剃られていないヒゲがジョリッとかすって痛痒い。