俊光と菜子のホントの関係
第11章 『一旦距離を置きたい』
ポケットからスマホを取り出してNINEを開き、今までトークルームに送られてきた菜子からの画像を、おもむろに眺めていった。
画像では、相変わらず楽しげな菜子の様子が伝わってきて、見てる方をも楽しい気分にさせる。しょっちゅう眺めてるのに全然あきない。
何をしてても、無邪気で愛らしくて。
この菜子に、昨日俺は…………
「…………っ」
そのことを思い出すだけで、たまらない気持ちになる。
罪悪感があるハズなのに、その意に反してまた菜子に触れたいという気持ちが溢れ出る。画像にだって手を伸ばしたくなる。
数年前までは、純粋に妹としか見てなかったのに……今じゃこんなにも菜子を求めてしまっている。
(だって、俊光君を独り占め出来るから。えへへー)
加えて昨日のセリフまで再生されると、ますます胸がぎゅうっと締め付けられて苦しい。
菜子…………
「――こら。まーた愛おしく想う気持ちが駄々漏れてっぞ」
「うっわっ!」
突如右の方から声がし、持ってたスマホをふいに落としそうになり、手の中で跳ねさせた。
危なっ……だ、誰だよっ!?
慌てて顔を向けると――
「……なんだ、智樹かよ。はぁー……お前なぁ、焦らせるなって」
「ボケーっとしてるお前が悪い」
いつの間にか右隣に座っていた智樹。
誰だかハッキリ認識すると、体中の力が一気に抜けた。
智樹は、前触れもなく話しかけたことに悪びれた様子もなく、イタズラっぽく歯を見せてシシシと笑っている。
何でこの時間に? と一瞬記憶が失っていたが、すぐに『あぁそうか。智樹もバイトだったんだ』と思い出せた。
しかし、ホームにいることも忘れて、菜子のことでどっぷりと浸ってしまっていたなんて……。
シフト増やして正解だな。