俊光と菜子のホントの関係
第11章 『一旦距離を置きたい』
バクバクと強く打たれている胸を手で押さえて突っ立っていると、玄関を上がったところにいる菜子が、特有の愛くるしい顔をハッとさせた。
「あ、俊光君。ご、ごめんなさーい。急に出て来て、驚かせちゃって……」
「いやっ……。ていうか、何もそんなしゅんってなんなくても。別に怒ってて黙ってたんじゃないんだからさ」
あーもう。昔から菜子に悄気られると弱いんだよ。捨てられて寂しがる子猫みたいで。
けど、こうして出迎えてくれたってことは……俺のことを変態だとは思ってないのか? 胸を鷲掴みしたってのに……。と考えながら、改めて菜子を見た。
最近『買ったばかりなんだー』と嬉しそうに言っていた、黒色のふわもこ長袖パーカーと、同じくショートパンツの上下セットのルームウェアを、愛らしく着こなしている。そのふわもこ感が、程よくふくよかな体型の菜子に、とてもよく似合っている。
そして……パーカーを着ていてもわかる、大きい胸の膨らみ。
ただ大きいだけじゃなく、弾力もあって柔らかくて。
そんな胸を、俺は…………
「あの……俊光君?」
「はっ!」
やっば!
いつの間にか菜子を(しかも、主に胸を)凝視していたことに気づき、慌てて意識を戻した。
ばっ……バカか俺はーっ! これから謝罪しようって時に、どこを見て、何を鮮明に思い出して浸っているんだよっ! これだから男はっ……! あるいは、例の『これだから童貞は』ってヤツか?
とにかく、こんなどうしようもない自分に、自分でビンタをしたくなった。